ほんのりすぎて怖くないかもしれない話。
俺の家系や周りには、霊感が強い人が多い。
父祖母、母祖父母、叔母、伯母、従姉妹(A、B)、姉、姉の幼馴染み(T)、とやたら多い。
小学生の時の話。
親戚で集まって、婆ちゃんの家で焼肉をして、夜もふけてきたし、子供たちみんな婆ちゃんの家に泊まるかって話になった。
婆ちゃんの家は1階がリビングとか婆ちゃんの部屋や子供部屋、2階に叔母夫婦の寝室と階段の踊り場を挟んで向かいにいつもは物置にしてる四畳半くらいの小さな部屋があって、子供達が泊まる時はいつもその四畳半を好き勝手使っていいことになってた。
その日は俺と姉と幼馴染み、従姉妹(A、B)の5人で布団を敷き詰めて寝てた。
最初は電気を消して暗くなった後もちょっかい出し合ったりしてワイワイしてたんだけど、みんなふっと黙ったんだ。
かくいう俺もなんか寒い?って思って空気読んで黙った。
八月半ばだとしても、寒いというか、重いというか、とにかく変な感じ。
しばらくみんなでキョロキョロしてたんだけど、一番年下の従姉妹のBが急に「悲しい悲しい」って泣き出した。
怖い、悲しいって言いながらガチガチふるえてて、俺はおばあちゃんに昔から言われてたように「怖いって思うとつけ込まれるから、怖くないって思うんだよ。怖くない、自分は何も出来ないから他のところに行ってって思うんだよ」って軽く言ってた。
姉も幼馴染みのTも「そうそう、気にしない!寝よ?」って励ましてたんだけど、ずっと泣き止まないんだよ。
次第にイライラしてきて、ほっとこうと周り目をやって、絶句した。
部屋の四隅や窓に人が立ってた。
人って言っても白くてふわふわしたモノやはっきり輪郭があるもの、顔まで見えるもの様様だった。
俺は咄嗟に「やばい人めっちゃいる!」ってBの手を握った。
よく分かんないけど、その時は誰かに繋がってなきゃ!って思った。
Tは「気にしちゃだめだって~」って言ってて、姉は人間の霊はあまり見えない人なので「どうしよ?」って困ってた。
そうしてる間もBはわんわん泣いてて、俺もどうしよどうしよってなった。
不思議なことに、踊り場に繋がる扉が開いてたのに、隣の部屋にいる叔母は全く気が付かなかったらしい。
収まりがつかないと踏んだらしい。助けを呼ぼうと一番動ける姉がガバッと起き上がって、固まった。
姉は起き上がったまま「踊り場見ないほうがいいわ」って言った。
この時、俺はBをなだめるのに疲れていて、助けを求めるなら早くしてくれってイライラしてたから、姉がやらないから俺が呼ぶ!と身体を動かそうとした。
でも、動かなかった。
金縛り?ていうのとは違う気がする。
普通目だけ動くとか瞬きできるとかみたいだけど、俺の場合は足だけ。膝から下だけ動かない。
初めてのことに、え?、え?ってなってとりあえず何かに足を突っ込んでのかもと思って足元を見たら、いた。
昔の着物によくある縦シマ?縦線が入った着物を着て、顔はよく見えなかったけど怒ってる感じじゃなかった。
ふくらはぎって座りにくいだろって感じなのに綺麗に正座して背筋もぴんと伸びてた。
髪型も今で言うお雛様みたいな感じできっちりしてた。
その人が乗ってるから足先だけ動かないのか~って呑気に納得したら、急に涙が溢れてきた。
意味が分からなかったよ。悲しいっていうかなんて言うか、その人見たら周りの奴らの輪郭もハッキリしてくるわ足動かないわBは泣き止まないわでパニックだったのかも。
とにかく俺は「なんで座ってんの~!悲しくないよ~!俺は何もできないんだってば~!!!!」ってわんわん泣いた。
Bもわんわん泣いてた。
それなのに隣のおばさんは来てくれなくて、姉も踊り場を見てから黙っちゃってて、その部屋の中はカオスだった。
少しして、Tが起きてこないのを不思議に思って「誰かー」ってのんびりした声で呼びかけた。
正直、俺たちの泣き声のほうがデカかったはずなのに、Tが呼びかけた途端に、隣の部屋から叔母さんが顔を出した。
叔母さんは泣きじゃくる俺やBを見る前に電気を付けて「あー・・・・・・待ってて」と言って下に降りて行った。
電気を付けたからなのか、部屋の四隅の人達はボヤけてて、ちょっと落ち着けた。
でも未だに足元に女が座ってて、その人はボヤけてくれなくてwww
程なくして叔母さんがまた上がってきて、「とりあえず下行きな」って言って、Tが「○○君起きれないよそれじゃあ」みたいなこと言ってた。
Bもしゃくり上げながら起きれない~って言ってて、叔母さんはすっごい面倒くさそうに俺の足を蹴って、俺とBの腕を引いて起き上がらせた。
不思議と起き上がったら、足の重みも女もいなかった。
支えられながらみんなで踊り場に出たら、下に婆ちゃんがいた。
婆ちゃんは「多すぎてババは上がれないから降りてきて、じゃないとなんも見えない!」って怒ってた。
それから、俺とBは仏壇のある婆ちゃんの部屋で、姉とTはリビングで寝た。
朝になって、昨日のことをみんなに聞いたら、姉は助けを呼ぼうと起き上がった時に踊り場に着物を着た女の子が体育座りをしてこっちを見ていたから、慌ててやめようと思ったらしい。
Bはとりあえず悲しくて周りに人が増えてきて重くてずっと泣いてたらしい。
俺もそんな感じだから「わかる!」って言った。
Tは全部見えてて、なんと、納戸?(窓の横に扉があって、その中にも物置がある)のほうからもドンドンと何かがこっちに押し寄せようとしてたのを食い止めてたらしく、踊り場の女の子にも気づいてたけど、こっちから出なければ害がなさそうなのでほっといたらしい。
んで、叔母さんは、起こされて扉開けたら部屋が真っ白だったから婆ちゃんを呼んだ、と。
婆ちゃんが言うには、たまたまあの時だけ2階が霊のたまり場になってしまっていて、そのせいで軽く異界みたいな感じになってたらしい。
溜まりすぎて、おばあちゃんからは満員電車を上から見てる状態だったって笑ってた。
本当の話なんでオチとかないけど、霊感あるとこうやって協力して解決してくれる。
ちなみにAはずっと寝てた。
あの騒動の中寝れるってすごい。