誰も「ナオミ」ちゃんを覚えていない

カテゴリー「不思議体験」

俺的にもの凄く怖かったこと。

妹が小学校1年生の甥を連れて来て、両親と一緒に昼飯を食ってた。
食後甥は近所に住む同級生の女の子の家に遊びに行くと言う。

「仲がいいんだな」と言うと「うん、いっつも一緒」とニコニコして言う。

ふと、自分が子供の頃を思い出す。
両親が共働きで4歳離れた妹は託児所に預けられ、当時1年生だった俺は帰っても一人きりだった。

入学早々、放課後1人きり庭で遊んでいた俺に、通りの向こうから声をかけてきたのがナオミちゃんだった。

「同じクラスだよね。何してるの?」
「何もしてない。つまんないから」
「ひとり?」
「うん」
「あたしもひとり。一緒に遊ぼ」

そこから2人で色んな話をした。
2人とも親は6時くらいまで帰って来ないこと。家にはいつも誰もいなくてつまらないこと
その日から毎日、2年生の秋にナオミちゃんが引っ越していなくなるまで、いつも一緒に遊んでいた。

「そういえば俺もあのくらいの頃、いつもナオミちゃんとばかり遊んでたな」

少し間を置いて母が言う。

「誰それ?」
「いや、覚えてない?小さいときいつも一緒にいたナオミちゃん」

「カオリちゃんじゃなくて?」
「それは3年生のときに引っ越してきたじゃん。っていうか独身のままそこに住んでるし」

母は全く覚えていなかった。
父も同じ。

「一度二人して迷子になって大騒ぎになったことあったよね?」

2年生の頃、母が帰宅しても俺が家におらず、学校近所駐在所を巻き込んで大騒ぎになった。

詳細は覚えていないが当時家から少し離れた松林の中で二人して心細く、わんわん泣きわめいているところを捜索してくれていた大人の人が見つけてくれた懐中電灯の灯りを鮮明に覚えている。

「あれはアンタ1人で迷子になったんでしょ」

自分の記憶が混乱しているのか?

あのとき怖くて2人で両手を繋いでいたことなど、おぼろげに思い出せる。
いつも眠そうなクッキリした二重まぶたや、笑うと見える1本抜けてる歯。
母の化粧品で二人して顔に落書きし合って、落ちなくてこっぴどく叱られたこと。
庭に大きな穴を掘って遊んだこと。
夏休み、ナオミちゃんが泊まりに来て敷き布団を横にして並んで寝たこと。
ザリガニ釣りをして俺はビビって触れないのにナオミちゃんは平気で掴んでいたこと。
冬に泥だらけの雪でカマクラを作ったけど、小さくて中に入れなかったこと。

次々に一緒に過ごした日々が蘇ってくる。

ナオミちゃんはいつも訊いてきた。

「おもしろい?」

そのときの不安げな眉間に皺を寄せた表情が好きだった。

それから家捜しして昔の写真を探した。

当時の写真は1人で写っている物か、小さい妹と一緒の写真ばかり。
1年から6年時まで毎年撮っていたクラス写真にもナオミちゃんはいない。

今でも交流のある同級生に連絡を取ってみても、誰も知らない、覚えていないと言う。

もう自分の記憶違いだろうと思ったところで、ダメ元で3年の時引っ越してきた近所のカオリに訊いてみた。

「知ってる。よく覚えてる」
「会ったことあったっけ?」
「無いよ。でも最初の頃一緒に遊んでるといつもあたしのことナオミちゃんって言い間違えてたでしょ」

深い混乱に陥る<-今ココ

明日って言うか今日、仕事行けそうにないや・・・。

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