現在進行形で不思議に思ってる話。
都内はまだ少し暑くて、夕方~夜になっても窓を開けている家が多い。
ある夜、駅からの近道で裏通りの住宅街を歩いていたとき、ふとある屋敷の二回の窓が開いてることに気付いた。
その窓にはすだれが掛かっていたが、室内からの明かりに照らされて目隠しの役割は全く果たしていなかった。
小さそうな部屋の壁際には古そうな箪笥、天井からは昔ながらの紐で点灯させるタイプの蛍光灯。
箪笥を見ると、ハンガーにかけられた白い浴衣か寝間着のようなものがぶら下がっている。
でも何かがおかしい。
寝間着はどことなく立体的に膨らんでいて、箪笥にぺたりと掛けられているようには見えない。
歩きながらその屋敷に近づいていって気付いた。
これ、ハンガーにかけられた寝間着じゃなくて、坊主頭のおじさんが着た状態で箪笥の前に立ってるんだ、と。
窓際に立って外を見ているとすると蛍光灯を背にするだろうから逆光になるだろう。
そのおじさんは窓の外も見えない、部屋の真ん中にただ立っている。
そもそも室内が明るくて、外は真っ暗なのだから、よほど窓際に来なければすだれに邪魔されて何も見えないだろう。
なのにおじさんはじっと窓を見つめ、箪笥の前に立っている。
徐々にその屋敷に近づき、通りすぎようとした瞬間、すだれを内側から押して外を覗き込もうとする影が視界に入った。
俺は一切そちらを見ずに自宅まで走って帰った。
これが一昨日の話。
いつものように近道して歩いていたら、ふと前日のすだれのことを思い出した。
その裏通りではなかなかの大屋敷だったし、見たらすぐに思い出すだろうと思って歩いてみたが、すだれをかけている窓などひとつもないし、ここかな?と思われる屋敷に近付いても見当たらない。
それどころか、屋敷に不釣り合いだった小さな間取りを思わせる小窓もない。
あれはなんだった?と思いつつ、帰宅したのが昨日。
また近道して歩いていくと、唐突にすだれが現れた。
明かりが漏れているが窓は閉められていて中の様子は見えない。
見えないのは残念だけど、まぁすだれは見間違いじゃなかったってことで・・・と納得し、その屋敷の斜め下あたりに差し掛かったとき、突然すだれに人影が映った。
そして、たてつけの悪そうな木枠の窓をガタガタと開けると、痩せた婆さんがすだれを捲り上げて窓の下をギョロギョロと見回してる。
俺は早足で屋敷の真下に移動し、再び婆さんがすだれを下ろすのを隠れて待った。
怖いもの見たさでもう一度様子を窺おうと、屋敷から少し離れつつ横目で見上げたら、すだれと窓枠の隙間から婆さんが笑って見下ろしていたので走って逃げた。
それが今日。
月曜から近道を使おうか悩んでいる。