俺が学生時代の話。
学校が終わった後、家に帰る前に近所の公園で一服するのが日課になっていた。
その公園にはいつも1人で遊んでる子供がいたんだ。
いつの間にか俺はその子と仲良くなってて、よくベンチでお喋りしてた。
その子は体に痣(あざ)が多かったんだけど、木登りしてる姿を見掛けてたから、元気な子だなぁ位にしか思ってなかった。
ある日いつもの様にお喋りしていると、桃太郎の話を聞かせてくれた。
学校で習ったそうだ。
習わなきゃ桃太郎を知らない世代に驚いた。
翌日。
その子がいない。
帰る時に茂みの陰に隠れているのを見つけた。
俺:「何してるの?」
子供:「かくれんぼ!」
友達できたんだぁ、と少し嬉しくなった。
でもおかしかった。
鬼らしい子が見当たらない。
俺:「鬼は誰なの?」
子供:「お母さん!暗くなると見付けてくれるんだ!」
切なくなって、その日はそのまま帰った。
次の日もその次の日もその子は隠れていた。
しびれを切らして声を掛ける。
俺:「お兄ちゃんが鬼やってあげようか?」
子供:「お兄ちゃんは桃太郎!」
?と思っていると、母親らしき人がやって来た。
そしてその子の頭を掴んだ。
ブチブチと音がする。
子供:「お母さんが鬼なの!お兄ちゃんは桃太郎だよね?」
血走った目で俺を睨みつける母親の顔は今でも忘れない。
ひとりかくれんぼも怖いけど、ひとりでかくれんぼをする子も怖いです。