どこかの子供が彼の背後で

友人の話。

里山を歩いていた時のこと。
少し奥に入ったところで、小さな集落跡を見つけた。
十に満たない家屋は、一つを残してすべて崩れ落ちていた。
おっかなびっくり中を探索してみる。

畳床の落ちた和室の片隅に、一つだけ小奇麗な小箱を見つけた。
中に入っていたのは、多種多様なメンコだった。
厚紙を重ね蝋で閉じた、手作りのしっかりとした物だったそうだ。

外に出て、そのメンコを使ってみた。

ピシャリ!ピシャリ!

静かな廃村の中に、メンコを叩きつける音だけが響く。
在りし日の情景が偲ばれて、ひどく物哀しい気持ちになった。

メンコを廃屋に戻し、帰路に着いた。
その時になって、彼はメンコに触れたことを後悔したという。
彼のすぐ後ろから、ピシャリ!ピシャリ!という音がつけて来たのだ・・・。
振り向いても何も見えず、だが音だけは着実に後をついて来る・・・。
まるでどこかの子供が、彼の背後でメンコ遊びをしているかのように。

麓に下りて大きな道に出ると、音はようやくついて来るのを止め、夕暮れの山の中へと引き返していったそうだ。

『ビールの空き缶』
後輩の話。

学生時代に、仲間と共によく山登りしていたという。
梅雨明けのある時、いつものようにテントを張り、酒盛りをしていた。
散々缶ビールを飲んでへべれけになってしまい、片付けは翌日ということにして早々と寝たのだそうだ。

夜半にテントの外で音がする。
何かがゴミを荒らしていると思い、寝ぼけ眼をこすりながら外を覗く。
一メートルもある大きな蛞蝓が三匹、真っ黒な身体を波打たせていた。
蛞蝓は、ビールの空き缶の山に顔を突っ込んでいる。
慌ててテントの入り口を閉め、寝袋に潜り込んだ。
仲間は誰も目を覚まさず、ひどく心細かったという。

翌朝見てみると、空き缶はすべてクシャクシャに潰されていた。
テント周りの地面には、乾いて光る筋が何本も残されていたそうだ。

後で調べたところによると、蛞蝓は麦芽酵母の匂いに惹かれるらしい。

「あの山に行く時は、ビールじゃなくて焼酎にした方がいいですよ」

そう言う彼の言葉は、どこかポイントがずれていると私は思う。

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