私が体験したんじゃないんだけど、祖母が亡くなる一週間ぐらい前にこんな話を聞いた。
祖母の実家の近くに戦時中に掘った防空壕があった。
戦争が終わって入口は長い間板で塞がれていたが、15歳の時、好奇心から友達とふたりで中を探検しようとした。
板で塞いでいたけど、だいぶ朽ちていて簡単に外せそうだった。
「せーの!」
力いっぱい引いたら意外と簡単に開いたそうだ。
それで真っ暗な穴を目を凝らして見下ろして数秒、突然ブワッ!と、こちらに伸ばし迫ってくる何本もの腕が見えて、反射的に後ずさりして難を逃れたが、一緒にいた友達が引きずり込まれた。
怖くて覗くことができず、外側から必死で友達の名を呼んだが物音ひとつしない。
走って家に帰って親に話し、それから町内の人たちとで探しに行ったら、友達は防空壕の中で死んでいた・・・。
あった出来事を必死で訴えたが誰も信じず、入口から転げ落ちて、打ちどころが悪くて亡くなったということになった。
その後すぐに穴は埋められたが、祖母はしばらく防空壕に引き込もうとする霊の夢にうなされたそうだ。
祖母が死んだあと、母にこんな怖い話を聞いたよって話したら「ああ、私も聞いたことあるよ。かあさんの十八番だわね」ってケラケラ笑ってた。
祖母の創作の怖い話だったのかも知れないけど、本当に聞いてて怖かった。
何言ってるのかさっぱり聞き取れない稲川淳二よりよっぽど怖かった。