自分が忘れられないのはオイルショックの頃にあった、男が仁徳天皇陵に侵入してたという記事。
地元の人なら判ると思うけど、あそこはこっそり忍び込んで釣りなんかする人がいるので(もちろん犯罪だ)、わざわざ新聞記事にする理由がわからず疑問に思っていた所、当時付き合いのあった大学関係者から「陵墓の敷地内に入ったのではなく陵墓の内部に侵入したため」と聞かされて仰天した。
あの陵墓が仁徳天皇を埋葬したものではない事は当時すでに知られていたが、じゃぁ一体何なのかは宮内庁が調査を許していないために良く知られていない、というのが一般的な解釈だが、彼の話では、実は墳墓の表層の調査は終わっていて、重要なものはあらかた発掘し終わっているのだと言う事だった。
発掘と言っても墳墓を壊す訳ではなくて、地表に無造作に散らばっている土器の破片等を回収していく作業に当たるだけだ。
宮内省はそれ以上の「陵墓の破壊」についてはかなり厳しいが何事にも建前と本音があって、それ以外の事にはある程度「お目こぼし」があったんだなと当時、感じた。
ところが男は陵墓を破壊しないで内部に通じる入り口を知っていて、そこから何か数点の品物を盗掘してのけたと言う。
無論、大発見だが建前としては許可自体が下りてないのだから、大々的に発掘を開始するわけにもいかないので、この事件はあまり大きく扱わない様、新聞各社にお触れが出たのだと知人は語った。
正直当時はまぁ面白い噂程度にしか思わなかったし、人から似たような話を聞いた事も無かったが00年代になって、同和関係の問題と関わる様になってから、「侵入した男」というのが古い土地の人間で、実行犯も全体では一人や二人では無かった事等、事件の全容を飲み屋で聞かせてもらい、背筋が凍った。
解る人にはわかってもらえると思うが日本の古墳の多くが”文字によって縁起の残されていない理由”を察してもらえばだいたい理解してもらえると思う。