私が短大に入った頃、後輩にせがまれて何処と云わずドライブに行く事が多かったのです。
その日は夜22時を回ってから、横浜に行こうと云う事になり、楽しいドライブがスタートしました。
高速は使わずゆっくり下の道を走って、とあるトンネルを抜けた頃、時間では23時を少し回ってた。
すると、水色のワンピースを着た女性が下を向いて歩いていたので車を横に着けて声を掛けました。
夏とは云え、23時過ぎに女性が1人でいるのは変です。
それも普通では歩かない道を・・・・・。
事情を聞くと、男に騙されて連れて来られ、これから歩いて青山の自宅に帰ると言うのです。
横浜に近い地に居るのに、歩くと言うので後輩が送ってあげようと提案し、それに私は賛成しました。
彼女を後ろに乗せてUターンをし、いざ、青山へ。
土地勘の無い私なので、彼女に聞きながらのドライブです。
私と後輩にとって、青山迄走るのも、楽しいドライブにしか過ぎなかったのです。
何を聞いても話しかけても、彼女は道を教えるときだけ、口を開きます。
変だな?とは思ってはいたのですが、ルームミラーにちゃんと彼女の姿は在るので、さほど気にも止めずに車は青山の一角に入りました。
その時に今迄無駄話をしなかった彼女が初めて、口を開いたのです。
一言。
「有り難う」と・・・・・・・・。
その瞬間、私と後輩は無言に成りました。
後ろの席に座ってる筈の彼女の姿が無いのです。
車は1度も止まらなかったので、途中で降りる事なんて、無理です。
辺りは明かりの消えた家ばかりが建ち並んでいます。
家までの帰り道、何処をどう走ったのか、思い出せません。
只、後ろの席に血の痕がくっきりと残っていたのだけは、覚えています