私は三姉妹の末っ子。
上にはそれぞれ、8歳と6歳離れた姉がいますが、その6歳離れた姉と体験した話です。
私が5歳のころ、下の姉が一人部屋を持てる事になりました。
姉は自分だけの部屋を大変喜んでいたのですが、3日も経つと「お母さん・・・私、一人部屋はもういやだ・・・」と言い出すのです。
母が何かあったのか?と姉に問いただすと姉は怯え切った顔で「あのね・・・夜、目が覚めたら、誰かが私の名前を呼んでるの。それで、『人間の分際で足蹴にするとはこの愚か者が!』って叱られるんだよ・・・。」と。
この時母は「疲れてるんだよ」などと適当な返事をしていましたが、姉はほとんど眠れていないようで日に日にやつれていきました。
そしてある朝、姉が言い始めたのです。
姉:「お母さん、私の事を叱ってるのは神様なんだよ。」
さすがの母もこの言葉には嫌な感じがしたのでしょう。
祖父から神社の太夫さんにかたちだけでも御払いをしてくれるよう頼んで欲しいと訴えました。
当時祖父は、神楽の面彫士をしており、神社とは親しくしていたそうです。
しかし私はその話を聞いて、神様は人間を守ってくれる→姉を苦しめるのはおかしい→神様なんか嫌いだ→神様のバカ~~!!と・・・家にある神棚に向かって神様を罵倒してました。
姉が早くよくなってくれれば、と思ってのことだったのですが・・・。
その夜、今度は私が誰かに呼ばれたような気がして急に目を覚ましました。
そしてふと部屋に飾ってあった額縁を見たんです。
豆電球の明かりだけでしたが、それははっきりと見えました。
額縁の表面のガラスには祖父が彫っているような、それでいて目だけが生きているかのように生々しい面が映っていたのです。
そして『この愚か者が!』と、あまりに激しい声で叱責され、私は泣き出した・・・のだと思います。
実をいうとこの辺りから記憶が曖昧で(笑)。
後からわかったことを書いて見ると・・・。
・姉が一人部屋に入る時にまたいでいた敷居は、階下の神棚の真上に位置していた事。
・その神棚からはスサノオノミコトを祭った神社の御札が出てきたこと。
・私が夜に見た面は、備中神楽で舞われる『大蛇退治』で有名なスサノオの面であったこと。
この事があってから祖父は、神楽の面彫り士をキッパリと止めてしまいました。
その当時祖父はちょうどスサノオの面を彫っていたのですが、失敗したその面を足蹴にして転がしていたそうです。