某離島に住んでいた時、「釣りダービー」と言うのに毎月参加していました。
小額をかけて、種類は問わず、大物を競うルール。
私は3回に1回位の割で優勝していたのですが、半年ほどスランプでその日は早朝から人が踏み込まない島の裏側に、4時間ほどルアーで探って歩いた帰りでした。
途中に浮浪者の聖地のような場所があって、ふと後ろが気になったんです。
「キャンパー(浮浪者)が何か忘れ物をして、今はいない。」と確信めいた感覚になって森へ一直線。
昼間なのに暗闇で、足元ばかり気にして行くと、その先にピラミッド状に石が積んでありました。
足元から視線を上げてゆくと、目の前の頂上にカラスが止まっている。
かなり驚いたのですが、よく見ると木彫り、周りには鍋釜類。
ふざけるな・・・と言う気持ちで、何も釣れず帰ってきて10日ほど経ったころ、キャンパーから社会復帰をした奇跡の同僚にそこで2週間ほど前に完全腐乱死体が回収された話を聞きました。
ピラミッドとカラスは浮浪者仲間で作ったそうです。
私は、行った時には臭いはしなかったなー・・・と気軽な感じでしたが、あの時、なぜ「何かある!」という気持ちなったか、はなぜか、その時は全くわかりませんでした。
私自身、自分の鈍さに驚いたのですが、半年ほどして、この話を友人に話した際に、思い出した事がありました。
その前の月も、大物を狙い、同じ海岸へ行き浜で夜釣りをしていたんです。
その日は、慣れないえさ釣りの夜釣りでその日も全く釣れずに帰ったんですが、朝まで釣るつもりが、怖くなって帰らされたのを思い出しました。
夜中の2時頃でした。
全く釣れないので、シュラフに入って寝ていたはずが、いつの間にか目が覚めて、後ろの森を見たら、その直後、遠くに懐中電灯の明かりがつきました。
「うわ!キャンパーだ、こんな夜中に、こっちくんな。」と思いました。
何しろ、霊の類は信じていないし、こういった場所と時間では、生きた(死んでた?)人間のほうが怖い。
けど、弱った事にまっすぐ、ゆっくりこっちに向かってきました。
ゆらゆらと揺れながら、「なんてのろい歩みだ」と感じましたが、こちらは武器になりそうな物の準備、折りたたみナイフとペンチ。
両手に持って身構えていたら、目の前まで来て小声で「釣れますか?」ときた。
腹立って、びびって「いえ」と答えたら、だまって帰って行きました。
で、後になって思うと不思議なのが手に持っているはずの懐中電灯の明かりはその人の顔を比較的くっきり照らしていました。
50歳くらいのおじさん。
その時点で生きていたのか?