九州から大阪へ向かう夜行バスに乗ったときの話だ。
時間はよくわからないが、夜明け頃だったと思う。
夜行バスには乗り慣れていたから、いつもは目的地まで余裕で熟睡できる俺だが、その時は、なにやらうめき声のような音で目が覚めてしまった。
「ううううぅ・・・・・・ううぅ・・・・・・」と言った感じで、やけに苦しそうな声だった。
誰かうなされてるのかなあ?と思っていると声はどんどん大きくなり、「ううぅ・・・・・・う・・・・・・んてんしゅさあん・・・・・・うぅぅ運転手さあん・・・・・・」と、何度も何度も「運転手さあん」を繰り返し始めた。
ところがバスは乗務員の休憩中でPAだかSAだかに停車している。
運転手は車外だ。
俺は他の客が心臓発作でも起こしたのか?と思って席を立ち、シートを覗き込みながら出口に向かった。
ところが、みんな寝ている。
こんなにでかい声でうめいているのに、みんなシカトかよ・・・と最初は思ったが、シートの最前列までたどり着いてやっと気付いた。
みんな寝てるのに、誰がうめき声を上げてるんだ?
すると、声はボリュームを絞るようにどんどん小さくなり、消えていった。
最前列の爺さんが目を覚まし、不審そうな目でこっちを見ていた。
変な疑いを掛けられても困るんで、そのまま席へ帰った。
もう一睡もできなかった。