友人が呼び鈴に応じ、ドアを開けてしまってから三日後。
姉妹の部屋で異変が起こった。
置いてある物が、空に浮かび上がって飛び回り始めたのだ。
「うひゃぁ!」
「ひぃ!」
悲鳴を上げながら、頭を庇って外廊下へ飛び出した。
驚いたことに、廊下に出て来たのは二人だけではなかった。
隣近所の住民が、皆外へ飛び出している。
聞けば、やはりどの家でも、ポルターガイストのような現象が起きたらしい。
「管理人呼びましょうか?」
「いや、どちらかと言えば御坊さん呼んだ方が」
「神主か牧師の方がいいのかしら」
怪現象が追ってこない外の廊下で顔を付き合わせ、そんな不毛な会話をしてしまう。
ま、部屋にはとても入れないしね。
皆でしばらく悩んでいると、部屋内の騒音がパタッと止んだ。
「あぁ、治まったみたいだ」
「明日早いっていうのに、とんだ迷惑だな」
「火、消してたかしら」
住民は口々にそんなことを言いながら、平然と自分の部屋に戻っていく。
「何というか、みんな慣れてきているなぁ」
「私らもだけどね」
姉妹も部屋に戻ることにする。
物が散乱した光景を見て、二人揃って溜息を吐く。
「誰が掃除するのー?」
「あたしら以外にいるっていうのか?」
嘆いていると、周りの空気の雰囲気が変わった。
また!?
慌てて外に出ようとした、その時。
「奥の壁にね、人型の影が浮き出したん。床から天井まで、ピッタリと頭から足が収まった細長い人影が。うーんとね、非常出口の表示灯があるじゃない。あの白と緑の。アレに書かれた人型、正にそのままの形してたよー」
「うんうん、ホントそうだったよね。頭の横に“非常口”って文字があったらピッタリな感じ。その影がね、そのままスゥーッと横滑りして、ベランダへ飛び出して行ったの。その後はもう騒霊騒動は起きてないから、アレが原因だったのねー」
・・・飯作ってやるから来いと呼ばれて、そんな話を聞かされてもなぁ・・・。
二人の合作料理を食べながら、頭が痛くなった私だった。