彼女は事故物件を見抜く

カテゴリー「心霊・幽霊」

彼女が霊感体質っていうのだった。

その体質を初めて知ったのは俺の実家に連れて行った時。
実家のすぐ裏にはすごく古い稲荷が祀られてるんだけど、木で隠れて家からは直接見えないし、ぐるっと回り込まないと行けない。

実家は一本の長廊下が玄関から稲荷のほうに向かってすっと伸びてるんだけど、彼女は玄関にあがると「ここ、色んなものが通るの?」と聞いてきた。

実家は昔からよく誰もいない廊下から足音がしたり、誰もいない部屋から楽しそうな話し声が聞こえたりした。
彼女は瞬時にそれを感じ取ったらしく「廊下の先に何か大切にされてるものがあるんだね」と、突き当りの壁の更に向こう、まるで稲荷がみえてるかのように目を細めていった。

彼女はもちろん稲荷の存在なんてら知らないから驚いたのと同時に、俺自身何度もこの家で不思議な体験をしたので彼女の感覚が本物だと解った。

そういえば彼女は稲荷さんに気に入られてるのか、京都の伏見稲荷に行った時、彼女と撮った写真に何度も白い発光体が写り込んでた。

彼女が気にいって一緒に撮った稲荷さんの顔面が発光してて、「イケメンなのにセルフモザイク!!」と彼女が残念がっていた。
ネットに載せたら作りものだと大バッシングされたが・・・。

あと彼女の家に犬がいるんだが、彼女の家族曰く「たまにもう一匹紛れ込んでる」という。

一度彼女と犬がじゃれ合ってるところと、彼女と犬が一緒に昼寝してるところを写真でとったら、オレンジの毛玉みたいなものが一緒に写り込んでいた。
犬の幽霊とかもいるんだなぁと驚いた。
そしてナチュラルにそれを受け止めている家族にも驚いた。

話を聞くと、彼女の家系は大体感覚が強くて判るらしい。
そして彼女の母親は看護師で、やはり病院でもそういった体験をしてるので慣れてるとのこと。

一度俺が学生寮から引っ越すために物件探しを手伝ってもらったんだが、事故物件に行き当たったことがあり、その時彼女の家族の感覚が全力で働いて回避したことがある。

実際の事故物件ってホントにやばいのな・・・あれには震撼した。

職業バレするから引越し先の物件に関してのツッコミは無しでお願いします。

あと事故物件である確証は見つかったけど、それ以外は全部彼女一家が見えたものだから間違ってる部分もあるかもしれない。

事故物件はとある大きな一軒家、もともとは二世帯住宅だったみたい。
建物は二階まであって、大きく左右に分かれていて、左側が昔ながらの和風の家、右側が新しくリフォームされた洋風の家、こんな作り。
売り手の人がいうには、もともと親世代と子ども世代が同居する予定だった。

異変はその家に訪問するときから起こっていた。
訪問したのは、俺と彼女と彼女母。
立地条件条件も良く駅近の場所を探していたのに、案内人が道に迷って辿りつけないということが起きた。

カーナビまでつけてたのに、近くまで来るとカーナビが変化方向を差し出て迷うから、最終的に自力でたどり着いたんだけど、やっぱり迷うような場所じゃなかった。

着いて早々、彼女は「なんか嫌な雰囲気、家が死んでるみたい」だという。
半分はリフォームしたこともあって、中は綺麗でとても死んでるようには見えなかった。
だけど俺自身、この家なんか暗いなーとは感じていた。

実際日当たりも良くて明るかったんだけど、何か翳りのようなものが俺にも解った。
彼女母は玄関をくぐったすぐから頭痛がすると言い出した。

先に右側のリフォームした方から見たんだけど、本当に綺麗で新築同然。
システムキッチンが使われてたからリフォームしてすぐだともわかった。

問題は反対側、和室で構成された方。
こちらは人が住んでいた跡がはっきり残っていた。

キッチンも昔ながらの作りで、日焼けした壁に振り子時計の跡がのこっているのが印象的だった。

その隣にサザエさんで言う皆で食事したりするであろう部屋があったんだけど、彼女も彼女母も嫌な顔をして襖を開けようとしない。

案内人がそんなことを気にせず、サッと扉をあけると、その先には一角の壁紙がちぐはぐに貼られた不気味な和室があった。

畳がしいてあったんだが、その一角の上だけゴザみたいなものが引いてあり、しっかりピンで固定されていた。

「ここ、畳が腐ってるから上から隠してるんですか?」

「腐ってるわけではないですよ、使える畳が汚れたりするとこうやって隠す人はいますけど」

汚れを隠す?
疑問に思って了承を得たうえで、ゴザを捲りあげてみると、一面何かの染みがついた畳が出てきた。

すると彼女と彼女母が「あーこれか」「血だわ」と納得顔。
その畳が面してるところに引き戸になった押し入れがあったんだけど、扉を引っ張っても全然開かなかった。

彼女と彼女母には、開けないほうがいいと言われた。
ここで彼女母は頭痛に加えて寒気もしてきたと言い出した。

ここまではずっと案内人に先導されて部屋をみてたんだけど、彼女母は急に案内人に言われるよりも先にさっと二階に上がり、迷うことなく一つの扉の前に行った。

そして扉をあけると、なにか飛び散った後のある洗面所がでてきた。
彼女母は更に奥の扉に向かい、開け放った。

そこはトイレになっていて、入って振り返ると、扉の上に一枚の御札が貼りつけてあった。

白い紙に観音様の絵とお経のようなものが描かれた御札。
彼女がそれを見て「ここで亡くなったんだよ、さっきの部屋からここまで、この男の人は逃げてきた」と説明してくれた。

「殺された人が、化けてでるってこと?」

俺が聞いたら、彼女母が否定した。

「そんな感じはしない、むしろ何かに酷く執着した嫌な感じがする」

怖くなってその物件を後にすることにしたんだが、玄関を出るとき、その玄関の上にも大量の御札が貼ってあることに気づいた。

こちらは白い紙に赤いインクで綱のようなものが描かれているもの、門を固く閉ざしたようなものが描かれているものが貼り付けられていた。

そのまま彼女の家に寄ったんだけど、出迎えた彼女の妹が顔をしかめた。

「さっきお昼寝してたとき嫌な夢を見たけど、お母さんたちのせいか」

話を聞くと、夢の中で知らない家に立っていた。
男の人がいて、「僕はもうすぐ死ぬんだ、君は逃げなきゃいけないよ」といったという。
すると、男の人の体からいきなり血が吹き出した。
男の人の後ろには、髪の長い女の人。
男の人は必死に壁を伝い、二階まで逃げたが、そのままトイレに逃げ込んで鍵をかけ、出血が原因で死んでしまったらしい。

妹の話と部屋の間取り、移動した場所がまんまさっきの家の話と合致した。

彼女母が「だめだね、先住人がまだいる家には住むもんじゃない。まあ、いつ先住人がいなくなるかは解らないけど」と言ってその家の話はタブーになった。

妹の予見では、おそらく、その家で化けてでるのはその女性だという。
女性は人を殺したけど死んでないのでは?自殺でもした?

いろいろ疑問に思うところも残ったけど、聞ける雰囲気ではないので理由は解らない。

ただ怖くて新聞で調べたりもしていないので、事実も闇の中。

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