ゆうべのこと。
自分の部屋はカーテンが薄くて、外が商店街だから、夜に電気を消しても窓外の灯りで室内がうっすら明るいんだよね。
で、夜中に急に咳き込んで目を覚ましたら、ベッドの足元に身長2mぐらいの真っ黒で痩せた影法師が立ってる。
ベッドの足元と壁との間は5、6㎝しかないから、人間が立てるはずはない。
ああ良かった、殺人鬼じゃなくてただの幽霊だ。
コイツ何する気だろうと思って見てたら、影法師はどんどん伸びて、天井に張り付いても伸び続けて、ベッドの頭上の天井の角まで来て下に折り返して、Π型になって自分の顔の上まで逆さまに降りてきた。
幽霊にのしかかられたことは何度もあるけど、こんな遠回しな金縛りフォームはかけられたことがない。
んでどーするのよとジッとしてたら、影法師は自分の顔の上を直角に折り返し、身体の上をすべりながら、足元のほうに向かってふーっと消えていった。
定規みたいにカクカクっとした正確さだったけど、顔の上を通る時、日向で蒸された犬みたいなケモノ臭が少しした。
あんな変な幽霊、初めて見たよ。
金縛り的な重苦しさはまったくなく、紙みたいに儚い薄さだったから、今思うと幽霊じゃなくて板モメンの類だったのかもしれない。