そのブランコには乗ってはいけない

カテゴリー「心霊・幽霊」

有給消化で平日休みが出来たから、5歳の娘を連れて公園に行った。

まわりの大人は母親ばかりで、人見知りな俺は娘が遊ぶ姿を眺めてるだけだった。
子供同士はなかいいんだな~なんて見てた。

フッとブランコに目がいった。
娘も並んでる。
信号の色みたいに、青・黄・赤の3色に塗られてる。

3つあるブランコの、左と真ん中には乗ってる子、並んでる子がいるんだけど、右の赤いブランコは空いてる。

並んでもない。
何気に近づこうとすると、女の人に肩を叩かれた。
誰かの母親だろうその人がボソッと言った。

「あの赤いブランコは乗れないから気にしないで」

何を言ってるのか意味が解らなかった。

もう1人女の人が近寄ってきた小声で話しはじめた。

私たちには見えないけど、子供たちはみんな見えてるんだって。
赤いブランコをこいでる女の子。

涙を流しながらブランコに乗ってるんだって。
その赤いブランコはその子専用だから誰も乗ろうとしないんだって。
だから大人は気にしちゃダメなの。

帰りに娘に聞いてみた。
自然な答えが返ってきた。

そうだね、泣いてる子には優しくしなきゃねって言う以外に言葉は見つからなかった。

家に帰り嫁さんに事を話すと、前に話したじゃんって言われ、夫婦の溝を感じた。

俺、空返事ばかりだからな。
もう1回詳しく話してってお願いしたら、面倒くさそうに教えてくれた。

その女の子は、公園の向かいのアパートで母親と弟の3人で暮らしてたって、母親は子供には興味がなくいつも遊びに出てたんだって。
だから、いつも弟と2人で公園で遊んでたんだけど、そのうち姿を見せなくなった。

しばらくすると、そのアパートから2人の子供が発見された。

痩せ細って死んでるのをね。
いつからか、あの子がいつも乗ってた赤いブランコに乗る子はいなくなったんだって。

赤いブランコは、弟が泣きながら押してるって。
爪をかみながら。

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