私が小学生の時の話です。
とあるマンションで管理人さんが飛び降り自殺で亡くなりました。
前任の管理人さんが病気の為、代わりに赴任した管理人でした。
代わりに来た管理人さんは、物凄く大人しい初老の男性で、前任の管理人さんの仕事をコツコツこなしているように見えていましたが、日が浅いので流石に細かい所までは目が届かず、住人さんとのトラブルが絶えませんでした。
前任の管理人さんの仕事ぶりが良すぎて、絶えず比べられていました・・・。
それから暫くして、その管理人さんは思い詰め過ぎ、とうとう飛び降り自殺を図りました。
マンションの屋上から中庭に目掛けて・・・。
飛び降り自殺があった日より数日がたった頃、その現象は起こりました。
私の部屋はそのマンションの6階の中廊下に位置する部屋で、屋上に上がる階段の傍に柵付き窓があります。
何事も無く、いつもの通り自分の部屋で寝ていました・・・。
『カッカッ』
そんな感じの音で目が覚めました。
時間は判りませんが、深夜なのは確かでした。
普通ならそのまま寝てしまうのですが、「自分の部屋の空気がいつもと違うなぁ」と思った瞬間!体か動かなくなってしまったんです。
しかも動かなくなったと同時に背筋に悪寒が走り、汗も吹く勢いで出ます。
意識ははっきりしているのに、体が動かせないなんて・・・。
「これが金縛りってやつ?」
そう思いつつ、動かない体を動かそうと四苦八苦していると、更に空気が重く感じ、さらに冷たくなっていきます。
只ならぬ雰囲気に包まれてきた・・・その時でした。
『こん・こん』
何処からか音が聞こえます。
その音の発生する場所はすぐに理解出来ました。
廊下側の窓です。
『こん・こん・こん・・・・』
また音がしました。
今度は少し長めです。
「誰だろ?窓叩くやつ。迷惑・・・・」と思った時、急に恐ろしくなってきました。
窓になんとも奇怪な気配を感じたからです。
だんだん心臓の鼓動が早くなっていくのが分かります。
更に窓を叩く音は続きます。
が、その音はだんだん大きくなり、音の間隔も短くなってくるのです。
『こんこんここんここん・・ごんごんごごん・・・・・・ごごごごごごごこーーーーー』
窓を叩く音はもう信じられない間隔で、しかも割れるような力強い音になりました。
「窓を叩く奴は、人間じゃない」
そう理解しました。
たしかに窓は廊下から手の届く高さにあり、叩こうと思えば叩けます。
しかし、問題は柵です。
柵は子供の手がやっと入る位の間隔で、到底大人の手が入るわけがありません。
しかも窓と柵の隙間は殆ど無く、高橋名人の16連射以上の間隔で、窓が割れる勢いの音が出せるはずもありません。
音はけたたましく鳴り、奇怪な気配も強く・・・いや近づいてきた感じにも思えます。
「あwせdrftgyふじこlp;:@」
もう私は声にならない悲鳴をあげてたかもしれません。
とにかく死にたくない、連れて逝かないでと思いつづけ、動きもしない体を必死に動かそうともがいてました。
そうしているうちに気配は近づいてきます。
気配が視界に入るか入らないかの位置にまで近づいて来た時、急に体が動かせるようになったので、とにかく目を閉じ、布団を被りなおしました。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
そう呟きながら震えていると、急に空気は軽くなり、気配も消えてました。
もちろん窓を叩く音も・・・・。
安堵感・・・。
それからは覚えていません。
恐怖の開放からそのまま寝てしまったのでしょうか?
とにかく朝起こされた時、団子虫のように背を丸めた状態であったと言われました。
母親に晩の出来事を話しましたが、夢でも見たんでしょう?と一笑されましたが、祖母に話すと、もしかすると管理人さんだったのでは?と言います。
祖母の話では、管理人さんを見た最後は、丁度私の部屋前の廊下の掃除している所だったと言います。
「最後の掃除が終わり、その階段を上がって屋上に出で訳だから、念が残ったのかもしれないね。ただ、一人で寂しいからと誘いに来たけど、子供だったから諦めたかも知れないねぇ」との事。
・・・という事は、わたしが大人だったら連れて行かれたって事?!
それからはあのような現象は起こらなかったですが、今でも思い出すと背筋が凍ります。