おばけなんてないさ(後編)

AV仕様の最強媚薬・エロティカセブン

媚薬・エロティカセブン

※このお話には「おばけなんてないさ(前編)」の続きです。

上京の時のようには、大学生活は上手くいかなかった。
まず、一番問題になったのが、実家の熟練中居の息子さんと同期入学だったこと。
自分もうちで働くつもりでいたらしくてさ。
本人、悪気はないんだろけど、学内で僕を「坊ちゃん」なんていうもんだから、ばればれ。
噂が広まってくと、そこから色々崩れてった。

一番空気悪くなったのが部内。
燃え尽きてないままに里帰りしたから、当然部活は軽音楽部に入ってた。
ロックが音楽の中で最高峰。
生き様もロックが最高っていう割に、ビジュアル系な三年、四年のバンドがいたんだ。
これに目をつけられちゃってね・・・。

何かというと、「苦労も知らずに音楽やってるやつはカスだ」みたいな扱い。
貧しさから音楽性は育つとか言う・・・。

「いっちょまえに苦労はしてきたよ」と言えたら苦労しないんだな。
で、部内に漂いはじめたイジメの空気。

最初はおきまりのパシリ。
それから、ちょくちょく、数の暴力で金は巻き上げられる。
その金、バイトしてためたお金なんだけどって言っても「嘘つくな!」だってさ。

ま、やられっぱなしも癪だから、学祭の時に、その先輩方がへったくそなB'zのコピーやったので、曲目を突然変更して、女の子にモテたいだけの勘違い音楽と、プロ目指してた人間とのレベルの違いってのを、一生懸命な拍手を歌い終わったあともらえる熱唱で見せつけた。

しかし、夜祭の後半ば拉致られて、お腹には紫色の痣が残るわ、目の周りは腫れあがるわって感じでぼっこぼこにされたからね。
後片付けの日は家でうんうん唸ってた。
痛かったなぁ・・・。

でもまあ、苦労せずにとか、絶対言われたくない言葉だったから、後悔はしてない。
真面目に部活するより、取り巻きの女の子相手にしてるほうが長い人にだけは言われたくない言葉だからね。
・・・これも言えたらよかったなあ。

二年になって、大分状況は改善した。
新三年で部長になったのが、僕とコンビを組んでたタカオって、TMNの影響受けたDTMマニアなんだけど、これが就任直後部内の乱れた風紀を正すと言ってくれた。

名指しはせずに、暴力沙汰が横行していたら、いつ部活が永久活動停止になってもおかしくないって問題提起。
これがあると、相手動きづらくなるのよね。
ほんと助けられた。

釘指すように、部内でいかがわしい異性交友の噂もあるから、こういうのも気をつけてほしいと。
それでも影で、ぶん殴られたりってのはあったけどね。
一番マシだったボーカルが抜けて、音痴のボーカルしか手元に残ってなかったから、ますますレベルの違いが浮き彫りになって、相当苛立ってたみたいだし。

とは言え・・・金巻き上げられるのはピタリと止まったから、それが有難かった。
ま、因果応報っていうのかな。
ドラムのセンパイは、バイクの事故で利き手の指を粉砕して、一時バチ握れなくなった。
リハビリ後も前よりよくハズす腕前にグレードダウンしてたけど。
それで本格的にバンド活動休止になって、たまにしか姿みせないようになったっけ。

三年になったら、ほんと別世界。
もう、センパイ方は居ない。
ま、見て見ぬふり決め込んでた奴らと交流がうまくいくかっていったら、そうじゃないけどさ。

二年間障らぬなんちゃらにたたり無しーでやってこられて、今更声かけて来られても困るしね。
でも、新入生相手には、面倒見よくしていたら、そっちで部内で良い具合に交流がつくれていった。

「なんでそんなに上手なんですか?」って言われることも多かったので、上京して挑戦してた頃のこと言ったら、プロのトレーナーについてたのが相当凄いと思われたらしく、ほんとあれこれと相談受けるようにもなった。

ようやく、僕の大学生活ははじまったな・・・という感じになった。
代わりに、タカオとの別れを経験したけどね。

学業も忙しくなって、部長業務あるからDTMのための時間とれなくなったとコンビ解消。

この頃の僕の日課というと、ゴミ焼却炉のあるあたりで、人知れず「おばけなんてないさ」を歌うこと。
なんか、振り返るとあのアパートでの日々のほうが、一年二年と過ごした学生生活よりもよくってね。
サンドバッグだった頃は、あえて思い出さないようにしてたけど、事態が解決して気が緩むと、ほんと懐かしくて。
すっごく懐かしくて、福の神様にとどけといわんばかりに歌ってた。

ある日、気がつくと三階の窓から誰か見てるのがみえた。
顔をあげる頃にはいなくなった。
それから、時折、視線を感じるようになった。
なんだかなぁ・・・と思いつつ、でもほかにこういう歌を歌える場所もなかったので諦めてた。

しばらくして、視聴覚室での練習日に、見覚えのあるような・・・ないようなって感じの部外の女子が来た。
この時の僕は、招待されたJazzセッションのために練習してたはず。

女子:「今日はいつものおばけの歌は歌わないんですか」

僕:「え?」

女子:「おばけってなんすか先輩」

僕:「おばけなんてないさ、おばけなんてうそさって」

女子:「エー!?先輩ああいうのも歌うんすか」

僕:「・・・んー、まあ思い出の曲でね」

女子:「そうだ。あの方も部員さんなんですか?」

僕:「あの方?」

女子:「えっと、セーラー服の」

僕:「・・・え?」

女子:「はじめて、歌声に気づいた時にみかけて。なんだか楽しそうで。それで、ふと足を止めたら、先輩の歌が聞こえたんですよ」

僕:「セーラー服・・・」

女子:「はい。大学構内だから目立ちますよね。あ、漫画研究会とかでしょうか」

僕:「・・・いや、多分違うと思う」

もしや。

窓ガラスにだけ映る不気味な影がみえた。
なんでいるの?
連れきちゃってるよ。
福の神さま。

それからというもの・・・僕が男子トイレに入ってた時に、「うひゃーーー」なんて男の悲鳴が聞こえる。
もしや、と思うと、「今なんか清掃具入れに入ってく女みた」とか震えてる。
開けてみてももちろんいない。

研究棟の屋上で、誰もいないからと気分よく歌ってたら、下のほうであがる悲鳴。
もしやと思って降りてみたら、上から落ちてくる女性をみたとか半狂乱。
これってもしかしてお祀りねだられてるのか?と・・・理解。
とりあえず悪戯っこに戻った罰として、折り紙でつくった箱に油性マジックで神棚って書いたら、霊障収まった。

結局、大学卒業まで彼女もできず・・・。
ま、馬鹿なのに卒業できたという幸運には恵まれたかな。
実家に戻ってからは、時折セーラー服の女性が、従業員の入浴時間の外れに露天風呂で目撃されたりして、なんだかもう、押しかけ女房されちゃってる気がしないでもない。

水の中が黒っぽく見えたと思ったら、土左衛門みたいに女が浮かんできた。
以上僕から見たお話。

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