俺自身まだ信じたりはしてないけど、まあ、話半分に聞いてくれ。
まず断っておくと、俺は幽霊を信じたいとは思うけど、だからこそ全力で否定するという人種。
いて欲しいと思う反面、素直に信じれないので、科学的な理由をつけられない現象に遭遇したい。
だからそういう心霊スポットとか巡ったり、百物語したりして心霊体験をしようと探しまわってるし、不思議な現象があっても、科学的な根拠を見つけようとする。
オカ板住人的には好ましい人種ではないかもしれない。
で、そんなある日。
特に心霊関係ではないオフで知り合ったAという男がいた。
彼と会ってすぐ、「なにか霊的なものが憑いてるよ」って言われた。
会ったのはそれが初めて、どうやら神社の息子らしいことはネットを通じて知っていた。
しかしまあ、初対面の人にそれを言われても、根本が疑う気質なので『ああ痛い子だ。いやもしかしたら詐欺かも?』くらいに思ってたわけだが、同時に好奇心も抑えきれなくなる。
同時に心霊スポットでヤクザに追いかけられた経験より怖いことはないと思ってた。
俺:「ふーん?どんなのが憑いてるの?黒髪の女の子がいいな」
最初はそんな返事をしたと思う。
けど、彼は首を振って「確かに女だけど、髪は長くて白いな。なんか人工的に塗ったような色。いやまって、蛇?」と・・・。
ここで少しドキリとする。
中学生の頃から、何度もそんな女の子が出てくる夢を見ているんだ。
真っ白い髪の毛で目が赤い、アルビノの女の子。
17歳くらい?で特別可愛いわけじゃない、ちょっとキツイ印象の顔つき。
しかも、たまに白い蛇の姿か、犬と人間の間の子みたいな気味の悪い怪物になることもある。
でも、どんな姿でも夢の中ではその女だと認識してる。
特に何かしてくるでもなく、役柄や服装も夢ごとに変わるため、心霊関係だとは思っていなかった。
夢の常連キャラ?程度に思っていたので、この夢の話は誰にもしていない。
そこでちょっとだけ興味が湧いた俺は、少し話を聞いてみることに。
俺:「憑いてるってどういう感じ?背後霊みたいな?」
A:「んーなんていったらいいんだろう?お前に興味があって憑いてるじゃないかな。悪意は感じない」
俺:「じゃあ、ほっといたらいいんじゃね?」
A:「いや、取り憑いてるのは確かだから。何かあるといけないし、お祓いした方がいいって」
その後しばらく話して、Aの父親に見てもらって、出来れば除霊しよう、お金は取らない・・・そういう話になった。
この時点で、俺は少し興ざめしていた。
結局、お祓いして金払えって言ってくる一種の詐欺じゃねえ?と、そういう認識になっていたんだ。
まあでも、夢の登場人物を言い当てたことにはちょっと驚きがあり、時間もあるからそのままそいつの神社へと行ってみることに。
タダでしてくれるっていうし、金を取られそうになったら逃げればいい・・・。
幽霊を信じないが興味はある人間の標準的な反応だと思うが、そう考えていた。
俺はオンボロ軽で10分くらい走って着いた神社は、結構大きな神社だった。
本堂(っていうの?)に案内されてから少し待たされ、Aは人柄のよさそうなおっさんを連れてきた。
たぶん、父親だろうと挨拶をすると、おっさんは何故かしきりに外を気にしている。
俺:「な、なにか?」
Aの父親:「随分凄いものを連れてきたみたいだね、何か怖い目にあったかい?」
俺:「いえ、特には」
Aの父親:「まあ、とりあえず・・・」
なにか言いかけた途端、「パン!」という紙風船が割れたような、乾いた音がした。
疑問に思いながら周囲を見渡すと、妙に焦げ臭い。
お香か何かかと思ったが、それにしては臭いし、妙だ。
が、そんな疑問もおっさんの狼狽具合が半端無くて、すぐに消し飛んだ。
おっさんはしきりに周囲を気にして、先程より輪をかけて狼狽していた。
その上、脂汗をたらーっと垂らしていたのが、かなり印象的だった。
Aの父親:「すまない。来たばかりで済まないが、もう帰ってくれないか?」
俺:「え?でも」
Aの父親:「今度もっと凄い人を紹介する、だから、今日は・・・・・・」
俺:「いや、えっと。さっきの音、なんなんですか?」
Aの父親:「・・・・・・ちょっと待っててくれ」
少し離れて、部屋の隅にあった盛塩?を持ってくるおっさん。
その塩は斜めに焦げたような筋がついていて、どうやら焦げ臭いのはそれが原因だったようだ。
なんていうんだろう?盛塩にガスバーナーを至近距離で当て続けるとこうなるかも?って感じ。
「こんなものは初めてみた。すまないが私の手に負えるような代物ではない」
俺:「はあ・・・」
このあと何の収穫もないまま帰されるのも嫌で、その霊について、幾つか聞きだそうとするが全くダメ。
そんな調子だから、来てすぐだったが帰されることに。
紹介するという人も、なんだか興が冷めてしまって断った。
というか、”何か担がされかけて都合が悪くなったんじゃねえか?”程度に考えていた。
ぶっちゃけ、盛塩も仕込みだとすら思っていた。
ただ、今思うと、確かに夢の中で、あの女が無表情以外の表情をしたことはなかった気がする。
まあ、そんな事件は数年前の話。
それから被害らしい被害もなく、つい先日まで忘れていて、相変わらず時折夢に女は出てくるけど、実害もなく過ごしていた。
で、一週間前。
家から離れた心霊スポットと噂される廃墟に探索に行っていた。
廃墟が好きな俺は心霊スポットとか関係なく廃墟に入っては、写真を撮る趣味があったんだ。
昼間だし、大して恐怖もなく、いつもどおりに写真を撮ろうと中に踏み込んだ瞬間だった。
「いぎゃあああああああああ!」
突然、男性の悲鳴が聞こえた!
昼間というのもあったかもしれない、幽霊だとか、そういう思考は微塵もなくて、ただ「事件だ!」と、反射的に考えて、声が聞こえた廃墟の二階に向かって走りだした。
そこは山奥で人通りも少ないから、殺人事件とかそういうことがあってもおかしくない雰囲気だったんだよね。
懐中電灯を武器のように構え、深呼吸して二階に入るが何もない。
部屋は3部屋あったんだが、どの部屋を見ても人の気配すらしない・・・。
しかし、どう考えてもあの悲鳴は二階から聞こえてきた。
百歩譲っても、建物はこのへんにここしかないし、高い位置から声が聞こえるとしたらここだけ。
おかしいなー。
確かに聞こえたんだけどなー。
と、ふと死角だったドア側の壁をみると・・・そこにはあの時の盛塩と同じ、ガスバーナーで描いたような線が斜めに引かれており、それを見つけた途端にあの時の焦げ臭さを感じた。
とまあ、それだけ。
直接的な被害も無ければ、俺が聞いた悲鳴だけが変ともいえる。
似たような現象はこの二件しかない。
一週間前のも、悲鳴さえ気のせいかもしれないと思い始めてたんだが、今朝、あの女の夢を見て数年前のことを思い出した。
オカルトに解釈すれば、憑いた霊が、俺って獲物に手を出しそうだった霊を殺す?ってのはおかしいか
破壊?どうだろう?
こんなことがあっても、幽霊は信じてないんだけどね、怖い思いもしてないし、ただまあ、妙だなーって経験だったので、投下してみた。