一種の残留思念

カテゴリー「不思議体験」

高校3年のとき、俺はくじびきで負け、美化委員会に入った。
美化委員は、朝6時から美化運動という名の校内清掃をしなければいけないハズレくじ。
委員会は3つぐらいに班分けされて、清掃活動は週2で持ち回り式。

俺は第三美化チームだった。(←チームというネーミングは今考えるとダサい)
第一班は月・木。
第二班は火・金。
そして俺の第三班は水曜だけ・・・土曜は学校が無いから。

班は十人ぐらいで、学年も性別もごっちゃごちゃ。
清掃活動するだけだし、特に問題も不満も無いんだけど、その中に同じ3年で、飛びぬけて暗い飯島という奴が居た。
背が低くていつも教室で本ばかり読んでるネクラ。
俺は「うわーつまんねえ奴と一緒になったな」とか思った。
他の班が楽しそうに見えたりもした。

最初の水曜日、6時に集まった俺ら第三班は、先生の指示で掃除を始めた。
校庭のゴミ拾いや靴箱の雑巾がけなど、班はバラバラに分かれて作業した。
俺はその飯島と二人で、体育館のモップがけを命じられた。
七時から朝練で部活が始まるから、テキパキ仕事をしろって・・・めんどくせえ。

俺は話したこともない飯島と二人で、体育館のモップがけを始めた。
朝の体育館は別に不気味でもなんでもなくて、すがすがしい感じもした。
せっかくなので何か飯島と話を・・・とか思ったけど、黙々と床を磨いた。
・・・正直辛かった。

すっごく静かな体育館で、男が二人・・・しかも無言で朝っぱらから床磨きなんて楽しくないな、なんて思ってたら、背中でキュッキュッて音がした。
バスケの試合中のシューズの音。

俺はすぐ振り返ったが誰もいない。
視線を戻すと、飯島は少し離れたところで淡々とモップをかけている。

気のせいかなって思ったら、今度は遠くで「ダン、ダン、ダン!」って音がする。
ボールを床に叩きつける音。
視線をそちらにやっても何も無い。

俺がキョロキョロしていると、背中から「聞こえたよね?」って声がする。
びっくりして振り返ると、いつの間にか飯島がいた。

「加藤君(←俺の名)も聞こえたでしょ?今の」って、ニコニコしながら飯島は言った。

ネクラな笑顔が不気味だったし、飯島から話かけてきたことが意外だった。

俺は「今のは何の音だ」と聞いた。

飯島:「残留思念」

飯島はモップの柄にアゴを置いて答えた。

そして続ける。

飯島:「人の想いが土地に留まるってのは良くある話なんだ。想像してごらん。例えば、父が死んでも尚、父が生前愛用していた椅子に父親が座ってる気がする。こういうのが一番身近な残留思念」

俺は飯島が何を言ってるのかいまいち把握できなかった。

「幽霊ってことか」と俺は聞いた。

飯島:「そりゃあ残留思念が、怨恨や未練など強烈なものならば、自縛霊になる可能性もあるけどね。でも、そんな事は殆ど無い」

「じゃあなんなんだ」と切れ気味で俺は聞いた。

飯島:「生きてる人の残留思念もあるんだ。校長用ソファには座りにくいだろう?あれも一種の残留思念。校長先生の想いが留まってるから」

ふーんと俺は聞いた。
でも内心は、気持ち悪い事を言う奴だなあって思った。

飯島:「たぶん、バスケ部の人の残留思念だと思う。熱い感じがするよ。相当バスケが好きな人の、生霊みたいなもんだと思う」

へえって俺は言った。

俺は、飯島って見た目どおりの変人だ、なんて思いながらモップがけを終わらせた。

黙々と床磨きしたおかげで、6時半には作業終了した。
飯島と二人で体育館から出ようとしたとき、また背中で音がした、キュキュキュッって。

「ね、生霊が練習してるんだよ。この人本当にバスケが好きなんじゃないかな」と飯島。

そしたら、体育館の重い扉が開いたて、そこにいたのはバスケ部キャプテンの内野だった。

内野:「お、加藤~。朝から掃除かよー貧乏くじ引いてご苦労なこった」

「朝練にしては早くねえか?」って俺は聞いた。

内野:「県大会がちけーんだ。最後の大会だし、それに今年はイケそうな気がするんだ」

俺と飯島は目を合わせて頷いた。
飯島は小さくピースをした。
内野に「がんばれよ」と言い、俺たちは体育館を出た。

そのあと、掃除を早く切り上げすぎて先生に軽く怒られ、空いた時間に校庭のゴミ拾いをさせられた。

生徒の登校時間になり、俺と飯島もそれぞれの教室に戻った。
変な朝だって思ったが、ちょっと感動した。

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