大学生だったころ、仲がそれなりによかった友人と一緒に、ちと歩いて遠出をしていた。
結構人がいるところだったんだが、信号が青になったんで歩き出そうとしたら、ダチが「ん?ちと待て」と言って、俺の腕をつかんだ。
あ?と思って止まったが、そこでイキナリ大きめの車(種類はわからない)が突っ込んできた。
後で聞いたところでは、居眠り運転だったらしい。
「うわ!」って感じでみんな避けたんだが、ちょうどなんか靴紐を結んでいたのか、中学生くらいの男の子が動けなくて、思いっきり轢かれた・・・。
「どん」って吹き飛ばされるんじゃなく、車体の下に引きずり込まれる感じで、グチャって感じだった。
思わず目をつぶったんでよくは覚えてないが、かなり酷いものだったらしい。
血のにおいが充満してた。
何より酷かったのは、ひどい言い方かもしれないが、死ねなかった事。
その後、そばの電柱にぶつかって止まったんだけど、「ひぃぎゃああああ」って感じの叫び声が響いていた。
アレは思い出すだけで吐き気がしてくる。
でも、それは別に怖くなかった。
気持ち悪かったし、うわぁ・・・とは思ったけど。
「おお~~うるせぇうるせぇ」
マジで空気が止まった。
轢かれた直後も止まってたんだが、それとはなんか違った。
轢かれた直度は、なんかシーンとしてた感じだったんだけど、今度は、みんながこっちを見てた。
信じられないって感じで。
アレは怖かった。
俺をみていたわけじゃないんだけど。
周りに、20人くらい居たんだけど、それが全員口を半開きにして、目を見開いてこっちを見てたんだよ。
思い出すだけでも寒気がしてくる。
そしたら今度は笑って、「何、止まってんだ?救急車呼べよ。あ、いらないか?」って言って、こっちも方見て、「どうだろ?あれ死んだかね、もう声しない訳だが」
いつの間にか、声はしなくなっていた。
その声で周りが一気に動いた。
「オイ、救急車!」って言う人や、足早にそこを離れる人や吐く人やら。
なんか全員、そいつから円を描くように離れて動いていた。
直線状にそいつが居ると、みんな円を描いて移動してた。
怒ってるって感じじゃなかった。
不謹慎だって言うやつも居なかった。
みんな逃げてた。
そいつから。
俺も怖かった。
事故が起こる直前まで普通に話してたのにさ・・・マジで怖かった。
そしてそいつは、事故現場、そのなんかひき肉みたいになっちゃってる場所を見て、「お、死んだ」ってつぶやいた。
後で聞くと、ちょうどその時に死んだらしい。
そいつは、もうかれこれ七年以上会って無い。
生きてるとは聞いてるが、どこにいるかもよく知らない。
ただ、精神病の患者とか、そう言う人間には職業上よく会うんだが、なんか、そう言うのとはまるで違った。
普通なんだよ、まるで普通。
普通なんだけど、狂ってる。
そう言う人間って居るんだなって、本当に納得した。
Be the first to comment