小学生の頃、塾に通ってたんだ。
確か夜6時から9時ぐらいまでだった。
でも塾の日は見たいTVがあって、いつも急いでチャリで帰ってた。
帰り道は、西に山があり東に川がある決して広いとは言えない道だった。
ある日、なんとなく「山抜けたら早く帰れるかも」って思ったんだ。
位置的にも家は山の向こうだったし。
山には舗装された道もあったから「行ける!」と思った。
そしてチャリを押して「えっさほっさ」と登った。
大した山じゃないから結構楽に進めた。
そして頂上に着いた。
頂上と言っても、道の頂上で山の頂上ではないが・・・。
まぁ後はチャリで下るだけだ。
いざチャリにまたがった。
そして何を思ったかふと右を見たんだ。
オッサンがいた。
茶色い服に茶色いベルトに茶色い帽子のオッサンが。
夜で暗いのにベルトまではっきり見えた。
なんせ上着の上にベルトしてたからな。
オッサンは俺に背を向けてずっと山を見ていた。
子供の「芝刈りの仕事のひとかな?」と俺は思ったよww
そしたらオッサンがこっちを向いたんだ。
痩せてて無精ひげの貧相だが、かなり怖い顔だった気がする。
腰ぐらいの高さの杖両手でついてた。
俺はボーっとオッサンの顔を見てた。
そしたらオッサンはジッと俺を見て、「若いんだから早く家に帰りなさい」って、ギリギリ聞き取れるぐらい小さい声で言ってきたんだ。
今まで聞いたことないぐらい低い声だった。
まさか話しかけられるとは思わなかったから、チャリから落ちそうになるくらいビックリしたよ。
でもオッサンはチャリから落ちそうになった俺を見てもリアクションを取らずに、また俺に背を向けて山の見始めた。
俺は「(ジイさんやバアさんなら帰らなくていいのかよ・・・・・・)」ってちょっとイラッとしたよ。
でも見たいTVがあったから、チャリで俺は何も言わずその場を去った。
家に帰って晩飯食べながら、両親と爺ちゃん婆ちゃんにその話をしたんだ。
そしたら爺ちゃんが血相を変えて「今すぐ酒を用意しろ!!」「一升瓶でだぞ!!」って騒ぎ出した。
みんなビックリしたが母が言われた通りに用意した。
爺ちゃんは俺の手をかなり強く引いて、さっきの山に連れて来た。
爺ちゃんは日本酒をオッサンがいた場所に置いた。
爺ちゃんは突然俺に話し始めた。
爺ちゃん:「昔、この辺りに小さい基地があって、空襲で沢山の兵隊さんと街の住民が死んだ。この山の中腹に墓場があって、その日に死んだ兵隊さんのお墓もいくつかある。でもその後から、この山は変な噂がたつようになった。」
爺ちゃん:「『叫び声やうめき声』や『夜にこの山に入ると亡霊が降ってくる』とか、色んな噂がたった。たぶん兵隊さんのイタズラだな(笑)」
爺ちゃん:「昔の兵隊さんの服は茶色いし○○(←俺)が見たのは、その兵隊の霊が悪さをしないように見張ってた偉い兵隊さんだよ。杖はたぶん刀だ」
・・・と、小学生の俺にはちょっと難易度が高い話だったが、何となく理解は出来た。
そして爺ちゃんは「偉い兵隊さんにお礼を言いなさい」って。
俺は「ありがとーございます!!」ってかなりデカい声で言ったよwww
そして家に帰って風呂入って寝た。
俺が唯一経験した不思議な話だ。