個人的に怖かったというか不気味だった話。
高校を卒業する直前の話なんだけど、俺はなんとか大学も決まって、そろそろ引っ越しの準備でもするか、と呑気に過ごしてた。
ただそのとき気になることがあって、急に自分の部屋の中にアリが出るようになったんだ。
別に噛まれたりとかはなかったんだけど、良い気はしない。
まず原因がわからない。
自室に食べ物は持ち込まないし、掃除しても次から次へと出てくる。
こいつら何を見つけてやってきたんだ?
そう疑問に思って、あるときアリをひたすら追いかけてみた。
よく見ると、何匹か歩いてるアリ、全員同じ方向に向かってる。
その先は俺のベッド。
マジか・・・と思いながら見ていると、アリ達はベッドを通り越して窓際の壁に向かった。
そしてそいつらは壁に打ってあるベニヤ板の隙間に入り込んでいった。
その壁にはもともと穴が開いていて、うちの親がベニヤ板を打ち付けて塞いでいたんだ。
中古の一軒家で価格もそれなりだったからいろいろとボロかったわけ。
とにかくアリの出所がわかったので親に穴の中のことを聞いてみた。
何か心当たりはないか?と。
すると両親揃って「穴って何?」と笑う。
「板を打ち付けただろ?」と言っても、そんなことはしてないし穴のことも初めて知ったという。
親が忘れているだけかと思ったけど、二人とも本気で知らない様子だったので話は諦めた。
この時点でちょっと変な感じがしてた。
俺はどうにかしようと思ってベニヤ板を無理やり剥がしたんだ。
ベリベリッと音を立てて板が落ちると確かに穴が開いていた。
そのとき本気でビビった。
穴の中に絵が入ってたんだよ。
版画だと思う。
取り出してみたら本当にただの絵だった。
その絵にはすごく不気味な顔が描かれてて・・・みたいなことはなくて、小学生が図画工作の時間に作るようなかなりお粗末な感じのやつだった。
でも不気味なことに変わりはなかった。
俺はその絵の隣で5、6年眠ってたんだからな・・・。
親も驚いてた。
それで話してくれたんだけど、前の住人は某有名新興宗教の熱心な信者だったらしい。
ただその宗教に関係するものならもっとちゃんとした物のはずだし、何より置いていくわけがない。
それに、俺一人で簡単に取り出せるものなのにわざわざ板を打ち付けて置いていくのも変だ。
その辺りは謎のまま、結局絵は捨てた。
気味悪いし。
でもその日からアリはまったく出なくなった。
俺に知らせようとしてくれてたのかな?アリに優しくしようと思った。
ただそれ以外の変化もあって、この家は結構怪奇現象が多くて、母親が白い光の玉を見たり、夜中に妹の部屋のドアが勝手に閉まったり、俺も深夜にリビングで白い女(のような何か)を見てパニクったこともあったんだけど、そういうことが一切なくなった。
つい最近、四年ぶりにこの家に戻って住むことになったんだけど、なんか全体的に雰囲気が軽くなってる気がする。
前はなんだかどよんとした重たい空気があった。
絵が関係してるのかはわからない。
けど、新たに天井の隙間から見える謎の広い空間を見つけたりしたんで、まだ何かあるのかもしれん・・・。
はっきりした怖い話でもないしこれといったオチもないけど、ふと思い出して書いた。
大学時代に別件で色々と怖い目にもあったけどそれはまたの機会に。