僕の実家はほんとに田舎でめぼしい物はなんにも無かったんだけど、退屈な顔合わせよりは幾分マシだった。
畦道をフラフラしてるとスゴく古びた鳥居が立ってた。
しめ縄は朽ちてるし、丹塗りは所々ハゲてて御札が所狭しと貼ってあったのが印象的なのを覚えている。
鳥居の奥には森が広がってた。
誰も見てないなー。
まあいいや。
やることも無かったし友達と鳥居の奥の森に行ってみるかって事になった。
この時がちょうどお昼の12:00前ぐらい。
2人で散策してると、拓けた所に家が建ってるのを見つけた。
ちょっとボロい民家って感じで表札も無いし、人の気配も無いから入ってみる事にした。
中は畳ばりで特に何にもない部屋だった。
台所は枯れててとても人が住んでる様子は無かった。
誰が住んでたんだろうなー?とか思いながら5分ぐらい家の中を見て回って外に出ると日が暮れだしてた。
家を見つけて出るまでに総合でかかった時間なんて10分か15分くらいなのにもう日暮れっておかしい。
何度考えてもおかしいし気味が悪くなってきたから逃げるように来た道を引き返した。
鳥居をくぐって外に出てみるとさっきまで夕焼けで赤かった空が昼下がりの真っ青な空に変わってた。
ますます気持ちが悪いし、もう二人とも混乱してるしでとりあえずその場で解散。
各々家に帰る事になった。
帰ったらとりあえずお風呂に入ろうと思って玄関を開けた瞬間、母親が血相変えて怒鳴ってきた。
母親:「あんた今までどこで何してたの!!!連絡もしないで!!!もうみんな帰っちゃったのよ!!!」
勝手に外出してこんなに怒られた事なんて無かったし、正直面食らったのをよく覚えてる。
私:「そんな怒んないでよ。ちょっと出かけたぐらいで」
母親:「ちょっとじゃないでしょ!!!せっかく昨日の夜はお婆ちゃんがご飯作ってくれたのに!!!」
ここで会話が噛み合わないことに気づく。
こっち(愛知)に帰ってきたのは今日の事だし、祖母に作ってもらった夜ご飯なんて物に心当たりはまったくない。
何を言ってるのか分からなくなって日付を確認してみると、帰省した日から5日も経ってた事が判明した・・・。
急いで友達に連絡をとったが、友達もまったく同じ状況だったらしい。
僕と彼が世界から5日取り残されていた。
今現在もその鳥居は存在してるけど二度とそれをくぐる気は無い。
近づくことも無いと思う。