命を削って酒を飲む

知り合いの話。

彼は大層な酒飲みである。
取り締まりが厳しくなった今でも、飲み歩きを続けている。

自分で運転して帰っていると聞かされた時は、流石に「止めとけよ」と注意した。
苦い顔の私に向かい、彼はニンマリと笑いかけた。

「良い場所があるんだよ」

そこは、既に使われていない石切り場なのだという。
街外れの山中にあって、訪れる者は誰もいない。
夜中にそこへ行き、闇の中に一人佇んでいると、不思議に酔いが醒めるのだと。

「大体五分から十分も立ってりゃァ、確実に素面に戻るんだ。一昨年したたか酔った晩に迷い込んで、偶然気が付いたんだけどさ。取り締まりしてる道を通る前に、必ず寄るようにしてる。裏道通れば飲み屋街からも近いし、便利なことこの上ないぜ」

話を聞きながら、ふと考えた。
彼は今体調を崩していて、飲みに行く回数も減っている。
そう言えば、どこを取っても健康そのものだった彼が通院するようになったのが、確か一昨年からではなかったか?
指摘してみたが、彼はまったく取り合わない。

「関係ないって!」

そう言って屈託なく笑っていた。

本人が納得しているならいいか。
そう思い、私もそれ以上は何も言わなかった。

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