無人で車

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺が小学5年生の夏、友達の家に遊びに行った。

遊びに遊んで、5時くらいになった、そろそろ帰るよと家路に着いた。
家に帰る途中に急な下り坂を歩いて下っていた。
舗装されていて何もないのに誰かに足をつかまれた感じになり、前につんのめった。

「うわ・・・危ねぇ・・・」

手とヒザを着いて顔面直撃はまぬがれたもののヒザを擦りむいたみたいで、その場に座り込んだ。

「あーいてぇ・・・」とヒザをさすっていると、坂の下から車が蛇行しながら結構なスピードで上がってきた。
と思っていると「ドカン!」という音と共に目の前の壁にぶつかった。
そしてそのままプシューと音を立てながら反動で下がり、民家に激突。

びっくりした民家の住人が慌てて出てきた。
中破した車と座り込んでいる俺を見て「アンタが運転してたの!!??」

えええ??

俺は動転した。
住人も慌てていた。

見ると車には人が乗っていなかった。

車が激突した壁や周りを見たが、ぶつかった衝撃で人が投げ出されている様子もなく、車の破片が散乱しているだけだった。

俺と住人はとにかくもう混乱していた。

俺は民家の人に見たままを話した。
時間も遅くなってきたので、住所と名前をいい、家に帰ることにした。

その後親から聞いた話はこうだ。

車の持ち主は坂の下にある小さな商店で買い物をしていたそうで、少しの買い物だったのでエンジンはつけっぱなし。
店を出ると車がなくなっていたらしい。

無人で車が発進したのはサイドブレーキをちゃんと引いてなかったから。
何かの拍子にアクセルが押されて坂を登っていった・・・らしいが、子供の俺でもおかしい事はわかった。

今俺は成人したけど、今でも思う。
もしあそこで転んでなかったら・・・。

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