絶対に行きたくないマンション

カテゴリー「不思議体験」

エレベーターの話で思い出したんだけど、俺も一つある。
学生の頃、NPO法人でボランティアやってて、その時は事務仕事を手伝ってた。
資金がないようで、少しでも経費を浮かせるために会報を近所の会員に配るのをよく俺にやらせていた。

その時も20通ほどの会報を預かり自転車で配り歩いていた。
何件か回って、マンションに入った。

その人は10階に住んでいて、エレベーターを使うことにした。
ちょうど、某宅配業者の人とその住人とおぼしきおばちゃんが乗りかけていたところだった。

3人で乗り込んで出発。
おばちゃんは確か5階か6階を押していたかな。
宅配業者の人は、たぶん11階だったと思う。
が、乗ってすぐにガタガタっとエレベーターが揺れ始めた。

おばちゃんが「地震!!」と言って床に伏せた。
俺も大きな地震だと思って座ったが、揺れはすぐに収まった。

エレベーター内の電気は大丈夫で、エレベーター自体も無事なようだったが、回数を示す点灯は消えていた。
故障か?と思ったがその時、エレベーターのドアが開いた。
『これで閉じ込められることはないな』と安心して、俺はさっさと降りた。
宅配業者の人もおばちゃんも同じこと考えたのか、続いて降りた。

ところが、降りた先はがらんとした真っ暗な広いフロア。
空調施設も何もなかった。
まだ昼だったのに、窓の外は夕暮れのように真っ赤だった。

奇妙だったのは、黒いビルがいくつも立っていたのに、電気がついてなかったことだ。
そもそも近くに高層ビルはないのに乱立していた。

おばちゃんは「あれ?あれぇ?」と困惑し、宅配業者の人も明らかに「変っすよねぇ?」と言ってきた。

俺は「すぐに降りましょう」と言うが、おばちゃんは「エレベーターは大丈夫?閉じ込められない?」と言ってなかなか乗ろうとしない。

宅配業者の人も「地震があったみたいだし、ちょっとやめたほうがいいっすね」とか言い、二人は「階段で降りる」と階段を探し始めた。

フロアの済に外に通じるドアがあったようで、宅配業者の人は「こっち!ありますよ!こっちから行きましょう」と言ってきた。
その時、俺はふとエレベーターに違和感を感じ、なぜか、エレベーターに飛び乗った。

ずっと開いたままだったエレベーターは俺が乗ったすぐに閉じ、勝手に動き出した。

止まってしまわないか不安だったが、何事もなくエレベーターは動き、回数表示も普通に作動していた。

ついた先は、最初におばちゃんが押していた5階だか6階だった。
まったく普通のマンションだったが、怖くなって俺は降りた。

エレベーターはそのまま閉じて動いていったが、もう乗る気はしなかった。
そのあと、俺は階段で下まで降りた。
会報は届けられなかったが、とてももう行く気はしなかった。

外には宅配業者の人の乗ってきたと思われるトラックが止まっていて、まだ戻ってきていないようだった。
が、怖くなって俺は待たずにさっさと逃げ帰ってきた。

そしてそれを機にNPOのボランティアはやめて、あのマンションにも二度といかなかった。

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