友人の話。
舗装されていない峠道を歩いていて、急に尿意を催した。
辺りには見渡す限り誰もいなかったので、その場で用を足すことにした。
一面に広がる景色を満喫しながら、下の斜面に向かい思い切りよく放尿する。
と、飛沫で濡れた所の砂利が真っ黒に変色するや否や、突然ザーッと崩れ始めた。
あっという間に自分の足元まで崩落してきたので、慌てて身をかわして逃げる。
・・・用を足しながら。
安全な場所まで下がり、台無しになったズボンを情けなく思いながら、半ばまで削れた道に目を戻した。
思わず目を疑う。
峠道はどこも崩れてなどいなかった。
道上に残っているのは、自分が描いた液体の軌跡だけ。
その時、頭上からゲラゲラと笑う声が聞こえた。
見上げたが誰もおらず、ただ愉快そうな響きだけが、斜面を駆け上っていったという。