タケルくんは電車になった

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小学三年生の頃、俺の友達のまた友達で「タケル」って子がいた。

二、三度友達に付き添って家に遊びに行ったことがあるんだけど、初めて部屋に入った時、床いっぱいに「プラレール」が敷き詰めてあるのを見て驚いたんだ。

その上をいくつもの電車のおもちゃが通り過ぎてって、タケルくんはそれを自慢げな顔で眺めてた。

とにかく電車がすごく好きな子で、道徳のノートの将来の夢を書く所に『『でんしゃになりたい』』とか大きく書いたりしてあったんだ。

運転手なら分かるけど、電車になるなんておかしいよ、とかは当時誰も言わなかった。子どもの無邪気な部分に過ぎないし、先生もただ微笑んでただけだったと思う。
今思うと、彼ははたから見れば「変わった子」だったんだと思う。

四年生になってタケルくんは突然転校したんだ。
それから半年位たって、同級生の間で、「タケルくんが交通事故で死んだ」とかいう噂が流れた。

多分その時は俺もびっくりしたと思うけど、それが本当かどうかは遂に確かめることもできなかった。

そして、そんなこともとっくに忘れていた高三の秋の頃、自転車で友達の家に遊びに行った帰り、道の外れの山の中に、廃電車が棄てられてるのを見つけたんだ。

廃電車はほとんど茶色く錆びてて、周りの木の枝やら草が窓から侵入してた。
植物に侵食される電車は何となく不気味で、その時、同時に周りの景色に懐かしい感じを覚えたんだ。

そこから去ろうと少し走ったとき、何気なく近くの古い一軒家の表札を見ると、そこにはいつかのタケルくんの苗字があった。

ああ、ここはあのタケルくんの家なんだと思い出して、廃電車の方を振り返ったんだ。

夕闇の暗い山の中、まるでこの世から置いてけぼりにされてしまったように佇むその古びた鉄の塊に彼の面影が重なった気がして、背筋からザワザワとした怖さがこみ上げた。

怖いか不思議と感じるかは人によると思う。

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