彼が高校の山岳部にいた頃の話。
ある山系を三泊四日で踏破するという予定で、夏季合宿に出かけた。
運悪く、初日の昼から濃いガスが出て、足元もろくに見えなくなったそうだ。
とりあえずガスを抜けようと思い、先導役の彼はひたすら前進したという。
途中で道が分からなくなり、どうしようかと悩んでいる時。
唐突に霧が切れ、眼下に見覚えのある小さな無人駅が見えた。
そこは最終日のゴール地点に定めていた場所だった。
四日で踏破する予定の距離を、彼らはわずか三時間と少しで達成していた。
OB会に出るたびにその時の話が持ち出されるそうだ。
皆、いまだに不思議でならないと言っている。