きみも醜く腐っていくよ

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

水商売をしていたあの日。

その夜ついたお客さんはナイスミドル。
にこにこ柔和な笑顔を浮かべながら私の顔を見て、「かわいいねえかわいいねえ」を繰り返していた。

ほどんどの客が酔いに任せて下品なことを言ってくる中、その紳士的雰囲気には好感が持て、また褒められ悪い気はしなかった。
だが、そのナイスミドルはにこにこしたままの顔で言うのです。

「僕の子供はみーんな障害者でねえ。大変なんだよ」

正直、突然そんな重い話をされて返答に窮した私は、そのお客さんがどのような反応を求めているか分からないせいもあり、曖昧に話を合わせていたのだが・・・。
相変らずの笑顔でその人は言った。

「若いのは今だけだよ。もう10年もたったら、きみも醜く腐っていくよ」

ドキュソ扱いされたあの日。
説教オヤジはゴマンといたが、あのお客さんの笑顔と言葉のギャップは後味悪かった。

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