俺の通ってた小学校の近くには駄菓子屋が五つもあった。
当時は駄菓子屋激戦区になっていて、小学生の間では駄菓子屋ごとに派閥みたいなのがあった。
そのうちの「みーちゃんち」と「ボンバーんち」って呼ばれてる駄菓子屋が隣同士になっていて、お店の売りが「おでん」ってとこも、店の古さや雰囲気もカブリまくってた。(特定されるため本当のお店の名前とは少し変えてあります。)
なもんで、激戦区の中でも似た二つの店は火花散る抗争があったんだ。
俺は断然みーちゃんち派だったんだが、外でおでん食ってるとボンバーんち派の奴らからヤジ飛ばされたりするw
「こっちのほうがうめぇ~ぞ~!」
「こっちのおでんデカイぞ~!」とかw
そこでおでん論争になり、本気で喧嘩になったりする。
俺は、みーちゃんちの優しい婆ちゃん(通称みーちゃん)と、店の中でいつも寝てる猫と汁がしみまくって完全に真っ黒くなったおでんが大好きだったんだ。
ある日、いつも通りにみーちゃんちにおでん買いに行ったら、猫がいない。
「きょうは猫いないの?」って聞いたら、突然みーちゃんが泣き出した。
俺がどうしようと思ってオロオロしてたら、みーちゃんが泣きながら話はじめた。
猫が子供達にちょっかい出された時に、ガリッと引っ掻いてしまったらしい。
普段から駄菓子の上で猫が寝たりしてたのもあって、苦情がきて、猫を他所に引き取って貰わなきゃいけなくなった。
でも、もう老猫なもので誰にも引き取ってもらえなかった。
猫にはかわいそうだが、商売やってくには処分しなきゃいけなくなってしまって、今は檻の中にいれてるんだと・・・。
それから少しションボリしたあと、みーちゃんは「ごめんね。こんな話しちゃって。おでん、持ってくるね」といって、おでんサービスしてくれた。
しばらくして猫いなくなった後のみーちゃんは元気がなくなった。
店の外のガチャガチャがカラのまま放置されたり、くじ引きの商品もなくなってるのに放置。
おでんの味も何だかおいしくなくなって、毎日違う味になってさ、苦かったりしょっぱかったり。
おでんの具も、変なすっぱい肉とか、ホルモンみたいなのが混じるようになって子供らから気持ち悪いと不評になっていった。
みんなみーちゃんどうしたんだろう・・・と心配してたけど、理由知ってるのは俺だけだったみたいだから黙っていた。
その頃、ボンバーんちの店が建て替えて新装開店した事から、みーちゃんち派からボンバーんち派に流れる者もぞくぞくと出始め、みーちゃんち派=ダサイみたいな風習になっても、俺は通い続けた。
その頃から、朝の登校班の時間に、みーちゃんち側にある歩道橋に、あきらかに糞と思われる立派なブツが仕掛けられるようになった。
それは歩道橋の階段のてっぺんに仕掛けられているため、踏んでしまう者が続出。
しかも、広範囲に設置されているため、なんびとたりとも逃れられない。
その歩道橋の手すりのところに、いつもみーちゃんの布団が干されてるから、よごしてしまうかもしれないと思って、うんこをどける事もできないんだよ。
これが、卒業するまでずーっと毎日続いた。
歩道橋をあがりきると、ちょうどみーちゃんちの二階の窓が目の前にあり、いつもみーちゃんが顔を出してた。
俺らがうんこをよけようとアタフタしてる姿を見て、「大丈夫かい?」って笑いながら心配してくれてた。
俺はボンバーんち派の卑怯な攻撃に屈するか!と、毎日う○こを踏みしめながら学校に行ってたんだ。
ところが、小学校を卒業して中学いったら、中学校は比較的街中にあり、近くにコンビニやスーパーがたくさんあるので、じょじょにみーちゃんちに行く機会もなくなってしまった。
しばらくしてみーちゃんちは潰れて空地になってた。
それから大人になり、2ちゃんねるで町BBSでみーちゃんちの話題があがってるのを見たとき、懐かしさとともにある疑問が頭にうかんだ。
・・・あの糞、もしかしてみーちゃんが仕掛けてたんじゃないの?
って・・・。
わざわざ朝早い時間に毎日歩道橋の上にうんこしに来る奴なんていないだろう?
布団干しながら、みーちゃんが仕掛けてたんじゃないの?
だって、みーちゃん窓からいつも見てた。
俺らが・・・うんこ踏むとこ。
おでん、変な味がした時あった。
苦いって、あきらかに何かまじってた。
あのすっぱい肉、なに?
ホルモン、ぶつ切りを串に刺してて
ものすごくグロかった。
みーちゃん、本当は子供キライだったんじゃないの?
猫、処分させられたこと
恨んでたんじゃないの?
って・・・。
今となっては、みーちゃんももうあの場所にいないし、確かめようがないけど。
あの暗い、古い店の中で、真っ黒いおでん作りながら、ずーっとみーちゃん俺らのこと呪っていたのかなぁ・・・?