持ち主のいないヘルメット

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

ヘルメット
友達の体験談。
当時いわゆる走り屋だった彼らは、色んな峠へむかい毎夜競い合っていたそうだ。

で、彼ら曰わく「事故が起きるとしたらやはり峠のカーブのあたり」だそうで、たまに事故った人の手袋やらバイクの破片やらが落ちていたりするんだそうだ。

ある夜、友人がいつものように仲間と峠で競い合ったりして楽しんでいたら、その友人が小便がしたくなったそうで、友人は近場のカーブで一度バイクをとめてガードレールを飛び越え、少し低いとこにある森のエリアに入ったそうだ。
で、そのちょっと奥に入って、木に向かって小便をしていたら草村で何かが月明かりに反射したとのこと。

小便しながらそれをよくみ見たら『ヘルメット』だったんだそうで、「あーまた誰か事故ったかぁー」くらいの気持ちになったそうだ。

だが、よく見れば見るほどそのヘルメットは殆ど傷もなく、さらに言えばなかなかデザインもカッコ良い。
誰かが事故って、失ったヘルメットなのは明らかだったが、彼はそのヘルメットが欲しくなったそうだ。

小便を終え、「持ち主はもういないかもだし、貰っちゃえ!」などと考えながらニコニコとヘルメットを拾い上げたとき・・・一瞬、『ある違和感』を感じたそうだ。

そして・・・その違和感に対して疑問を持つ前に強烈な物を見てしまった・・・。

ヘルメットを持ち上げたらヘルメットにしては少し重かったという違和感・・・。
殆ど傷のない綺麗なヘルメットを両手で持った瞬間にバイザー越しに『中の人』と目が合ったそうだ。

後日、ヘルメットの中の人は警察が引き取り、多分家族の元に帰ったそうだ。

実際その後、ヘルメットの中の人がどうなったかは知らないのでわからないが、多分、『首から上のない』人の葬式が、ちゃんと全身揃った状態で葬式が出来たんじゃないかといっていた。

ガードレールは衝撃のスピードと角度によっては鋭利な刃物のようになり、そのヘルメットの人はカーブでミスった時に綺麗にギロチンされ、首が吹っ飛び、下の柔らかい土や草が生い茂ってる中に転がったから殆ど傷がなかったのだろう。

で、その中身は警察は見つけられなかったのか見つけなかったのか、いずれにしろ数日はそこに放置されていて、それを友人がみつけ拾い上げて目が合ってしまったということ。

その友人はもう40代で、当時20才くらいの話なのでかれこれ20年は前の話。
そこの峠ではあまりに事故が多発していたため、今では道路に窪みがわざと設置されてスピードが出ないようにしてあるらしいです。

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