絶対に立ち退かない『藪ばばぁ』

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

子供の頃の後味悪い土地柄系の体験談を書かせていただきます。

地元の実話なんですけど、私たちが野球の少年団で使ってる山のてっぺん近くに、ある野球の町営グラウンドがあった。

その下に藪があるんです。
凄い深い立ち入り禁止の藪。

その藪から先はもう特に川とか以外何も無い場所なんですけど、藪をずっと真ん中くらいまで行くと、一見ボロい小屋があるんですね。

そこに子供から『藪ばばぁ』って呼ばれてるおばさん?みたいなちょっと頭逝っちゃってる日本人じゃない人が居ました。

んで、そんなんいたら子供は面白がるわけで、今考えたら最低ですが・・・。

藪に石投げて屋根に当てたりして遊んでたわけです。
その度、藪の向こうから怒った声で「オォオボェエエええ!!!」みたいな声で声が聞こえるんすよ。
子供心に皆それがまた面白くて、野球のクラブ終わった後に数名でそこの小屋まで行って、逆に「オォオボェエエエ!!!」って叫んで走って帰るのが流行ったんです。

肝試し的な・・・。

んで、その日は俺含め4人くらいで小屋に行って、思い切ってドア開けたんですよ。
そしたらね、猫。
猫の死骸。
まな板の上に、包丁・・・。

怖くなって叫びながら藪の外に出て、自転車が停めてある所まで走ってみんなで「やベーやベー」言ってたら、下の藪から藪ばばぁ出てきんです。

くっそ汚い格好してたんだけど、手には包丁もって「オォオオボエェええ!!!」って叫びながら・・・。

んで、子供だった俺らから見たら信じられない速度で自転車置き場と藪の間にある土手を駆け上がってきて、もう何言ってるかわかんねぇ叫び方しながら、すげぇ勢いでこっちに走ってくるんです。

まぁ家荒らされたらそら怒るだろうけど、あの頃はそんな状況考え付きもしなかったんです。

んで、チャリで全力で逃げるわけですが、包丁投げてきたんですよね。
思い切り・・・。

もうそれで怖くなって私らはさらに全力で逃走。
家に帰り両親にその事をみんなで話すとすげぇ怒られて、消防団の人たちが様子を見に行ったんですよ。

正直、気味が悪くて、中のことまでは大人も知らなかったみたい。
そしたらなんか藪ばばぁは物凄い怒って消防団の人たちに襲い掛かったとかで、そのまま藪ばばぁは捕獲。
実の娘に引き取られ病院に入れられ、その後少しだけ普通に生活して亡くなったそうなんです。

後から聞いたら、藪ばばぁって私たちの何年も先輩くらいの時期からあそこにいて、消防団のおっさんたちの頃もいたらしく、当時は球場がある山腹で普通に暮らしてて、球場の建設で「この家壊すよ」って言われて、凄い抵抗してあそこに住み続けたらしい。

周りからからかわれてる内におかしくなってしまったみたい・・・。
んで、捕獲された時、猫とか犬食ってたのが発覚。
流石にやばい・・・ということで強制的に立ち退き&保護された。

なんか、高校生くらいの時に藪ばばぁの子供が藪ばばぁ亡くなったって、皆に報告しにきて、なんつうかわいそうな事をしたんだ我々はと皆後悔した。

罪の念があるのか、藪ばばぁの小屋は今でも残してあるみたいです。
からかった全ての人への戒めだとかなんかで・・・。
藪もその場所だけは整地されず当時のまま、周囲だけが発展していってます。

子供ながら本当に申し訳ない事をしていた、と心から思った出来事でしたね。

不思議を作っているのは案外こう言った事情を知らない周囲の人間なのかもしれないと、その時思いました。

大人になり、未だに思い出すと凄い申し訳ない気持ちになる話です。

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