その子の母からの恨み節

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

昔、栃木にいたころの話。

両毛線という単線があって「山前」という駅と「小俣」という駅の間に川があってカーブの鉄橋があったんだ。

子供だから時刻表なんて知らないわけ。
ひとり小児麻痺の子がいてさ、いつも一緒に遊んでていつものように鉄橋を渡ったんだ。

本当にいつも怖くてさ、でも本当に列車が来たんだよ。

渡りきっていた俺たちは後ろを見て固まったさ。
今でも思い出すよその列車の汽笛とブレーキの音。

怖くてみんなで逃げ返ったさ。
俺なんか何時間も押入れに隠れてたよ。

そして、そいつの母さんがうちに来たんだ、鬼のような能面のような顔だった。

「○○ちゃんいつもいっしょに遊んでくれてありがとう」
「○○ちゃんは天国で新しい足をもらってみんなより早く走ってるよ、きっと。」

忘れられないな、あの時の顔。

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