有馬温泉での体験談

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

俺が子供の頃、自治会のイベントで有馬温泉一泊旅行に行った。

まだ小さかった俺は母と一緒に大露天風呂に入ったんだが、お風呂が先客で満員だった。
でも一切、物音が無い。
お湯のチャプチャプ音も洗面器の音も会話も何も無い。

その上、あれだけ大勢の人が湯船に浸かってるのに誰一人として動かない。
微動だにしない。

ボーッと思い思いの方向を向いた人が湯船に浸かっているだけ。
それと、肌の色がやたらと土色っぽくて、顔がわからない。

目、鼻、口の起伏はあるんだけど、そこにあるべき目、鼻、口が見えない。

「あれ?なんでだろ?」

そう俺が思いながらも、母やその他のオバサンと一緒に湯船に近づいていくと、先客がスーっと消えて誰もいなくなった。

「お風呂に入ってる人、消えたよ」と母に言っても「何言うてんの?」と相手にしてくれない。
ていうか、先客の存在に全く気付いていなかった。

その後、皆で風呂を出て廊下に出た時、廊下の景色が一面全部、色が抜けて白黒画面になった。

これは俺だけじゃなく、母も他のオバサンも全員見た。

その後、そこらじゅうから呻き声がエコーかかったみたいな状態で響き渡って、みんな悲鳴をあげて部屋に戻った。

もうそれからは、
「何?今の?」
「どういうこと?」
「ちょっとフロントの人呼んで!」
とみんな大騒ぎになって、フロントに電話入れて怒ってるわ、オバサン同士で口喧嘩するわで、大変だった。

布団はやたらと部屋の入り口から遠いトコにまとめて敷いて皆で肩を寄せ合うようにして寝ていたが、母も他のオバサンもあまり寝れなかったらしい。

不思議と俺は怖くなかったもんだから一人グースカ寝てた。

後になって母から聞いたんだがそこは以前、火事で大勢焼け死んだ所だったらしい。

●之坊●●●(掲載自粛)、今はもう営業してないけどね。

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