人を好きになると犯罪を犯す

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

めちゃくちゃ有名な話なんだけど、知らない人もいるかもしれないから念のため。
江戸時代に実際にあった話です。

「八百屋のお七」

火事と喧嘩は江戸の華と言われるくらい、江戸は火事の多い町でした。
天和2年(1683年)12月28日、その日も江戸を大火事が襲い、多くの人が焼きだされてしまいます。
世に言う「天和の大火」です。

ある八百屋の養女であるお七も、火に巻かれ郊外のお寺へ避難したのでした。

命からがら避難できたお七。
お寺のお坊さんたちは、彼女を優しく介抱してくれました。
と、その中にひと際美しい寺小姓が。
お七は彼に目を奪われてしまいます。

命の危機に瀕すると、生殖本能から恋に落ちやすいとはよく言われますが、お七は完全にその寺小姓にひと目惚れ。
恋の炎までも燃え上がらせてしまったのでした。

かくして命拾いしたお七でしたが、あれからあの寺小姓のことが忘れられません。
来る日も来る日も彼を想い、恋い焦がれては溜息をつく日が続きました。
そんなとき、お七の脳裏をある悪念が過ぎってしまったのです。

「もう一度火事になれば、またあの方にお会いできるかもしれない」

もしまたあのような大火が起きれば、多くの人が財産や命を失ってしまう。
数えの16歳(現在の満年齢で14歳)であったお七はそんなこと承知の上でしたが、
やはり抑えきれない恋心に、お七は抵抗できなかったのです。

お七は夜な夜な町をさまよっては、火打ち石をカチカチ鳴らして火をつけました。
しかし、どれも小火程度で済んでしまい、なかなか火事にはなりません。

虱潰しに火をつけて廻っていたお七は、とうとう見回りをしていた与力に捕えられてしまったのでした。

さて、奉行所に連れて行かれたお七。
当時の法律では、放火は火あぶりの刑と決まっておりました。

しかしお奉行様は、まだ幼い少女であるお七を哀れに思い、何とかして助けようと思います。

少年法というわけではありませんが、江戸時代にも数えで15歳未満の者には、死刑が適用されないとう決まりがありました。
さらに江戸時代の戸籍はまだまだ曖昧なところが多く、町人の年齢は原則自己申告で十分だったのです。

それを利用してお奉行さまは「お七や、お主はまだ15歳であるな?」と問いかけます。

しかしお七は「いいえ16歳でございます」と正直に答えました。
お奉行さまはさらに「嘘をつくでない。お主はまだ15歳に違いなかろう」と問い質します。

けれどやはりお七は「本当に16歳でございます」ときっぱり申し上げ、証拠してお宮参りの記録を提出したのでした。

そこまでされてはお奉行さまもお手上げ。
お定め通り、お七を火あぶりの刑に課したのでした。

お七はその後、鈴が森刑場にて火刑に処されました。
普通火刑に処された者は苦しみのあまりこの世のものとは思えない断末魔の叫びを上げるものですが、お七は自分の犯した罪と向き合うように、グッと唇を噛んで静かに焼けていったそうです。

お奉行さまに質問されたとき、お七は何を思ったのでしょうか。
何とも後味の悪いお話でございました・・・。

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