ちょっと語らせてくれ。
今から8年くらい前、自分が高校生3年生で大学受験のため予備校に通っていた時期のこと。
受験本番前の詰めの冬の時期で、予備校の自習室にこもる毎日が続いていた。
ずっと室内にいると気が滅入るので、たまに外に散歩に出るんだけど、その日はしんしんと雪が降っていたのが印象的だった。
散歩中に便意がしたため、どうせなら綺麗な場所で用を足そうと、予備校近くの百貨店のトイレにいったんだ。
雪の日の平日の日中で、当然店内の客は少なく、トイレも誰もいなかった。
俺は洋式便所に座り、携帯をいじりながら、ダラダラと用を足していたんだが、そこで、異変が起きた。
なにやら謎の言語を発しながらトイレに入ってくる人がいたのだ。
声質的にはおっさんのような感じだが、発声のニュアンスが日本語的ではなく、かといってどこの言語かはわからない、初めて聞くような不気味な声で、「ウォーサー」「ウォーサー」と言いながら入室してきた。
自分は個室内にいるため、音で様子を判断するしかなかったが、トイレに入室してから、おそらく3分程(体感ではもっと長く感じたが)ずっと「ウォーサー」「ウォーサー」といって、なかなか出て行かなかった。
室内をうろうろしているようで、用を足している雰囲気ではなかった。
俺はこの人が何をしているのが気になったが、不気味さと恐怖が勝り、外に出て確認することは出来ず、早くこの謎の声の主がトイレから出て行くのを祈るのみだった。