俺は2000万円の価値があるらしい

カテゴリー「日常に潜む恐怖」

稀によくある変わったバイトの話。

もう15年くらい前の話だけど、街中で声をかけられたお爺さんに気に入られて喫茶店に一緒に行った時に、バイトの話をもらった。

「学生ならお金無いやろ。うちでちょっと働かんか?」

何気ない提案だったけど、最初はお断りするつもりだった。

どう見ても普通のお爺さんだったが、お付きの人が居たのでアレな人だったんだと今になって思う。
仕事内容だけ聞いて、素直に悪い話では無いと思ったからバイトする事にした。

内容は凄く単純な物で、週末だけの仕事。
紹介された人と一日、孫のように接したり恋人のように接したりするだけ。
デート商法に似た物なのかな。
日給は平均すると10万くらい。
たまーにボーナスももらえた。

監禁されたりする人もいるみたいなんで、助けを呼ぶ用にパカパカのケータイももらって
服なんかもその日その日で事前にお付きの人と買いに行くんだけど、それも仕事が終わればもらえる。
至れりつくせりな環境だったと思う。

神事などの行事によく連れてってくれて、お爺さん達がお披露目がどうたら毎回話してて
自分の事では無いんだろうなって思ってたけど、どうやら自分の事だったみたいだったのを後で知った。

偉いっぽい和装のおじさんにお爺さんが「この子どうや?」と聞くとおじさんは「珍しいので2000万ですかね」と、そう答えた。

少しでも意味を知ったのはお付きの人からの説明があったからだけど、内容が怖い物だった。

買われたら普通の暮らしはできなくなる。
自由も無くなる。
でも生活に不自由せんようになる。
買われた後は部屋を一つ与えられ呼び出しがあったら応じて儀式の間は座ってるだけで良い。

人目につく街中などには出られない。
部屋にいる間は何をしていても良いし、月給はサラリーマンより良い。

当時の俺は怖かったので断った。
断ったらその後はお爺さん達とも疎遠になってしまったけど、そのお話を受けていたらどうなっていたのかと考えるとほんのりと怖い。
なんの仕事だったのかは気になるけど。

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