狐が助けてくれた?

カテゴリー「怨念・呪い」

十年くらい前、俺は田舎も田舎、家が山に囲まれてるようなところに住んでたんだ。

山の頂上付近に俺んちが所有してる畑があって、別に農家とかじゃなくて、自分ちで食べる分だけ作るみたいなちっちゃい畑な。
盆地だったんだけど、ちょっと脇道に入ると林の中とか山道(もはや獣道)につながってたんだ。

もちろんコンビニなんてなかったし、遊び場といえば近所の寺の境内か近所の神社周辺の森?林?だった。

当時から幽霊の存在とかそういう非科学的なことは信じてたけど、一切見たこととか感じたことはなかった。
いわゆる零感だな。

家から100メートルも離れてないところに墓があったけど、小さい頃はそういうところで弟たちとかくれんぼとかして、遊び場にしてた。
成仏されたやつなんだからどうせ出ないとか思ってたからな。

で、神社にもよく遊びに行ってたんだが、小学校から帰って来て、弟と一緒に神社周辺の森の中に遊びに行ったときだった。

森の中には俺たちが遊んで出来た、道とも呼べないような獣道が出来てたんだが、ご神木がいくつかあって、主にそれを目印に森の中を歩いてた。
鬼ごっことかかくれんぼとかを弟2人と遊んでたんだけど、かくれんぼで俺が鬼になってゆっくり10数えたとき、それまで聞こえてた風で木葉が擦れる音とか、鳥の鳴き声とか虫の声がピタッと止まったんだ。

「何か変だ」と思いながらも、隠れた弟を見つけるために弟の名前を叫んだ。

かくれんぼなんだから呼んでも返事なんてするわけないんだけど、そのときは音が止んだことが不安で不安でそうしたんだと思う。
で、弟がいつも隠れていそうなところを探すんだけど、いつもは結構簡単に見つかるのに、なかなか見つからない。
どっちも見つからないなんてことは今までなかった。

ついに諦めて、「どこにいるか分かんない!ヒント!」と叫んだ。
これはいつもどちらかが見つからない時に、ヒントとして手を叩いてもらって、大体の場所を把握するための兄弟の中での合図みたいなものだったのだが、それでもなんの反応もない・・・。

弟がからかっているんだ!!と思った俺は、もう夕暮れ時であったこともあり、「出てこないとおうちに帰っちゃうから!」と叫んだ。

弟は俺にすごく懐いていて、弟が俺と一緒に帰らないなんてことはありえないことだったから、こうすれば何が何でも出てくるだろうと思ったんだ。
でも、やっぱりなんの音もない。

もしかして弟は俺を置いて2人で帰ってしまったんじゃないか?

普段は絶対ありえないことだったが、自分が立てる音以外なにも聞こえない空間で不安が募り、そう考えた俺は、それなら俺もとっとと帰ってやると帰り道を歩いた。

でも、異変にすぐに気が付いた。

目印にしているご神木があるって言ったよな。
歩いても歩いても同じご神木が目の前に現れるんだ。

ぐるぐる回ってる!?

そう思って、拾った石でご神木以外の木に目印として傷をつけながら歩いたけど、やっぱり同じご神木が見えてくる。。
しかも木に付けたはずの目印の傷が消えてる。

ここまで結構な時間が経ってて暗くなっててもおかしくないのに、ずっと夕暮れが見えてる。
怖くなって、なんとなくご神木の近くなら安全だと思って、それからはかなり長い時間、ご神木の木の根元に立ったり座ったりしてた。

相変わらず自分がたてる音以外は何も聞こえないし、虫も一匹も見当たらない。
蟻一匹いなかった。

恐怖で泣きだした時、自分が座ってご神木の反対側から、何かが落ちるような「トサッ」という音がした。

急な自分以外の音にかなり驚いて、喉がヒクッて鳴ったのを覚えてる。
大人が3人くらい手を広げてやっと囲めるくらい大きなご神木だったから、振り向いたところで何も見えなくて、恐る恐る反対側に回ってみたら、黄色っぽい白っぽいクリーム色?の狐がいて、俺をじっと見つめるのな。
野生の狐なら何回か見てたから、その狐が普通の狐よりちょっと大きいなって分かった。

まだ俺は小さかったし、牙のある動物に森で出くわしたってことにかなりビビった俺は、狐の目を見ながら後ずさった。

一応熊がよく出る地域だったし、家でも学校でも出くわした時の対処法として目を見ながら離れろってことは教わってたからな。

背を見せて逃げたらだめだって。
幼いのによくできたとあのころの自分を褒めたいよ。
だけど、その狐は襲い掛かってくる様子もなく、軽やかな足取りでご神木をぐるぐる回り始めた。

意味が分からなくてそれを目で追ってると、何週目かで回るのをやめて俺が歩いてた獣道を歩きだした。

ホッとしていると、狐がある程度まで歩いたところで止まって、俺を振り返って見ていた。
尻尾をゆらゆらと揺らしてずっと見ていた。

それが、飼っている犬が俺が追いつくのを待っているときにそっくりだったから、衝動のままその狐に近づいた。

ある程度近づくと、狐はまた先へ進み、同じように俺を振り返った。
”ついて来い”と言われているような気がして、戸惑いつつもその狐についていくと、また見えてきたご神木に近づいたとき、急にあたりが真っ暗になった。

驚いたが、そこが神社の境内だと気付いて、すごく安心した。
同時に、俺がいなくなったことで弟が呼びに行っていたらしい母が、「○○くん(俺の名前)!!」という言葉とともに俺を抱きしめてくれて、探してくれてたのかと分かったのと、恐怖から解放されたのとでわんわん泣いた。

先を行っていた狐はいつの間にかいなくなっていたが、次の日の朝、神社の神主の息子(友達)から、一つのご神木を囲むように首を噛まれて死んでいた5匹の狐が見つかったらしい。

それを聞かされて、もしかして自分はその5匹に化かされていて、あの狐が助けてくれたんじゃないかと思った。

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