死ぬ前の寝言

カテゴリー「怨念・呪い」

幼稚園のころ、昼寝の時間に、となりで寝ていたK君が寝言を言った。
K君の声ではなく、大人の男の声でだ。

「あと十八年」

そんなこと寝言を言った半年後に、K君は病気で死んだ。

小学生のとき、町内会主催で山でキャンプをやった。
真夜中、同じテントのM君が寝言を言った。
M君の声ではなく、大人の男の声でだ。

「あと十二年」

二年後、M君は川で溺れて死んだ。
中学生のとき、小学生の弟が部屋で寝ていて寝言を言った。
弟の声ではなく、大人の男の声でだ。

「あと八年」

弟は通学途中の道路で、トラックに轢かれて死んだ。
高校生のとき、老衰末期で入院している祖父を見舞いに行ったら、ベッドで昏々と眠り続けている祖父が、ふいに寝言を言った。
祖父の声ではない、男の声でだ。

「あと五年」

その後めずらしく、うっすらと目を覚ました祖父にそのことを話すと、祖父は最後の命をふりしぼるように告げた。

「三百年ほど前に、自分たちの家系に強力な呪いがかけられた。その呪いが、どのような理由でかけられたのかも、いつ、どのように現れるかも、伝わっていない。ただ、その呪いが現れる前には、なんらかの前ぶれがあって、ひとたびその呪いが現れれば、とても恐ろしいことが起こるのだ」と。

それを告げてから二週間後、祖父は息をひきとった。

それから、五年後の日が来ることに、俺はおびえ続けてきた。

その日がいつか確かなところは解らないが、日がたつにつれて、不安はどんどん大きくなってきている。
万一のときのために、これまでの経緯を残しておこうと、俺は今、PCに向かっている。

今、気がつくと、部屋の四つの隅に、K君、M君、弟、祖父、がそれぞれ立っていて、俺をじっと見つめている。

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