震災の被害調査で東北に行っていた時の話。
俺らが現地に着いたのはGW明けからだったんで、地震からはもう2ヵ月ほど経った頃になる。
当時現地はやっと瓦礫や土砂をどかして、なんとか車の通行が支障なくできるようになったくらいの感じだったと思う。
俺らの仕事は道路や側溝等の損傷状況を調査するため、ほぼ1日中歩き回っている感じ。
道路脇にはランドセルとか携帯電話とかいろんなものが散乱していたけど、その中でも俺が気になったのが放置車だった。
普通は車なんか持ち主は簡単に特定できそうな気がするだろ?
実際広場に車を集めてどの場所にどのナンバーの車がありますよ、みたいな感じの告知がしてある車置き場的なスペースもあったし、そんな車とは対照的に道路脇に放置してある車は地震から既に2か月経過してるから・・・つまりは「持ち主は逝っちゃったのか・・・」とか一人で納得していた。
会社のA先輩が俺らに合流したのは何日か経ってからだった。
なんていうかバイタリティのある人ってのはどこにでもいるもんで、A先輩もそんなタイプの人間。
被害調査して歩きながら、放置車を見付けては放置車の調査まで始めてしまい、車の中を見回して「お、この車の持ち主はきっと若い女だな」とか、普通にトランクを開けて「こいつはたぶん貧乏人だな」とか・・・俺は正直、車を見るのも気味が悪かったし、車に触れるとか信じられんかった。
内心、「こいつアホやろ・・・」とか思ってたし。
2週間くらいで現地調査が終って帰省して、次回の出発の日までデータ整理しながら自宅待機することになったんだが、何日か経った時、B先輩から「Aの車が大破したらしい」と連絡が来て驚いた。
なんでもA先輩が自宅にいたところ、もの凄い轟音がしたので慌てて外に飛び出したんだそうだ。
見ると路駐していたマイカーに別の車が激突して悲惨な光景だったんだと・・・。
それで翌日、落胆していたA先輩のもとへ車を運転していた若者が謝罪にやって来てこう言ったらしい。
若者:「お宅の前付近を運転中、何やら白い霧のようなものに包まれたと思ったら突然意識を失って・・・気が付いたら病院のベッドの上にいた」
若者はピンピンしており翌日退院したが、A先輩の車は廃車。
本人は気にも留めていないと思うが、俺は原因に何となく心当たりがあったし、車だけでよかったなァとか思った。
ほんのり怖かったのは、現地調査中に俺が宿泊していた部屋で何度か金縛りにあったり、全身がやけに浮腫んだりしたこと。
そう報告した時の同行していたC社の連中の態度がおかしかったので問い詰めたところ白状しやがった。
実はその部屋は少し前までC社の社員が使っていたんだが、過労のためか急死してしまったらしく、社員は「ぐぎゅうぅぅ~~」だかなんか変な声を出してそのまま死んじまったらしい。