刺青を焼き消そうとした

カテゴリー「都市伝説」

あるところに、新人ヤクザの謙吾という男がいた。
そいつは、ヤクザの貫禄を出すために刺青をいれたいと常々思っていた。

しかし、金が全然無い。
しかし、刺青をいれたい!

悩んだ謙吾は「どんなにしょぼい刺青でもイイから、だめでもいい。タダでいれてもらおう」と考えた。
とにかく、刺青入れてもらおうと、店に行った。

もちろん、断られた。
しかし、どうしても入れて欲しい謙吾は、店の店員と交渉を続けた。
その時、店の奥からしょぼくれた爺さんが現れた。

実はその爺さん、幻の彫物師として有名な源五郎という男だった。
源五郎は、謙吾の背中を見るや否や「この背中、私の芸術家魂を掻き立てる!タダでいい、是非彫らせてくれ!」といいだした。

なにはともあれ、謙吾は有名な彫物師にタダで刺青を入れてもらった。
背中いっぱいに。

謙吾は喜んだ
後日、源五郎が死んだ。

すると芸術界が、「謙吾の背中の刺青は源五郎氏の遺作であり最高傑作だ!この刺青は後世まで永遠に遺しておくべきだ!」と騒ぎだした。

後日、謙吾の背中の刺青の素晴らしさが、国際的に認められ、謙吾自身が人間国宝として認められた。
すると、直後から謙吾の周りにSPがうろつき始めた。
刺青を守るためである。
謙吾はSPに段々と苛立ちを感じ始めた。

そんなある夜、謙吾とその彼女とがやっていた。
彼女は執拗に背中をいじくった。

「こんな刺青があるからへんな人がいるのね」とかなんとか言って、女は刺青に爪を立てた。

すると、部屋に隠れてたSP達が2人を包囲し、女は逮捕されてしまった。

謙吾は次の日から、SPをまくため、逃亡を図った。

逃亡は見事に成功した。
謙吾はSPがこなさそうな田舎びた一軒のラーメン屋へ昼食を摂りにいった。

店のテレビでは、ニュースをやっていた。
そのとき、スタジオが俄かにざわめき始めた。

謙吾はテレビを見つめている。
キャスターはニュースを読み始めた。

「臨時ニュースです。先日人間国宝に任命されたXX謙吾さんが、逃走し行方不明になりましたこの事態に警視庁はXX謙吾さんに、懸賞金300万円を懸け、市民の情報を募っています」

店の客の目が一斉に謙吾に向けられた。

「300万」「300万」謙吾は店を飛び出したが、外にも懸賞金の話の話を聞いた老若男女であふれかえり、彼は土地勘の無い町を走りまくった。

やがて、謙吾は自動車の廃棄場に辿り着いた。

追っ手も無い。
謙吾はここにいることにした。

夜になった。

謙吾はドラム缶に火を焚いた。
ふと謙吾は考えた「こんな刺青があるから、人に追われるんだ!こんな刺青があるからあいつ(女)ともうまくいかなくなったんだ!!こんな刺青があるから俺の人生がめちゃくちゃだ!!!」

謙吾はドラム缶の中の一本の焼けた木を手に取った。

「こんな刺青!焼き消してやるぅぅぅぅ!!!!!」

その時、真っ暗闇の廃棄場が眩いほどに明るくなった。
よくみると、照明。
謙吾はあっけにとられた。

すると、何千、何万もの人が謙吾に近づいてきた。

「君は、国宝であるその刺青を焼き消そうとした。君をもう自由にするわけにはいかな!!」

SPは拡声器でいった。
謙吾はあっというまに人の波に飲まれた。

人気の無い博物館。
そこにカップルが現れた。
そして2人は硝子のショーケースに飾られた一人の男を見た。

「なんだこれ?」
「これ?刺青の人だよ!」
「あぁ~そういえば」

2人はその場を立ち去った。
博物館はまた静かになった。

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