8月は死者が家に帰るお盆と言う行事があります。
今回はそれにまつわるお話です。
私の友人の父親が近海漁業を仕事にしている人がいます。
彼が若い頃、出航は禁止されていたのにも関わらず、お盆の時期に船を出したそうです。
雲ひとつない快晴の早朝、出航して10分もしないうちに急に雷雨となり、前方の視界もほとんどなくなりました。
彼も心配になり、港に戻ろうと方向転換した直後、海面に細い棒が無数にあることに気づきました。
棒ではない、人間の腕だったそうです。
無数の腕は一定の幅で沖の方に流れていったそうです。
何の音もなく、整然と流れていく腕に彼は老人が伝える死者の行進を思い出しました。
その行進を刺激しないこと、さもなくば死者に連れて行かれるだろうと・・・。
彼は大男で豪快な男ですが、お盆の3日間は絶対に海には出なくなりました。
彼は言います。
死者は海を渡って黄泉の国に行くのだと。
お盆の海水浴は避けた方がいいのかもしれません。