その子は不幸という文字が似合う

カテゴリー「都市伝説」

小学生のときの話。

小6の時にクラスに女の子転入してきた。
ちょっと不良っぽい雰囲気だったし、家庭のことや以前の学校のことで悪い噂ばかりが流れていて最初はとっつきにくい感じの子だった。
だが担任の先生の指導がよかったのか、数週間でクラスに馴染めるようになった。

いつの間にか友達もたくさんできていて、休み時間のたびにクラスの友だちと遊ぶようになり係りの仕事もするようになった。

前の学校では担任と合わなくて、不登校気味だったし、素行も良くはなかったのは本当のようだったけど、こちらの学校では何か問題があると、その度に先生が叱ったりフォローしたりしていた。

元々お母さんはいないんだけど、お父さんとも事情があって一緒に暮らせなくなったらしく、一時的にお祖母さんの家でお姉さんと暮らすことになったので引っ越してきたらしい。

そんな状態だったから勉強は遅れ気味だったんだけど、それも誰よりも早く登校して、始業前に先生に補習してもらったりして取り戻そうとしていた。

そうやって何ヶ月か過ぎたんだけど、また突然彼女は転校することになった。

またお父さんと一緒に暮らせるようになったらしく、お姉さんと一緒に電車で1時間ほどかかる街に移ることに決まった。

名残惜しくはあったけどしょうがない。
お別れ会を開いて送り出した。

彼女の方も、時期は少し早かったが、卒業アルバムに載せる作文を書き上げて無事に旅立っていった。

彼女のその後の報せが届いたのはそれから半年後のこと。
彼女の住むアパートが火事になって亡くなった。
火事から2、3日は生死の境をさまよっていたけれど、結局回復できなかった。

出火の原因は放火で、深夜に下の階の住人が自棄を起こして火をつけたそうだ。
中学生のお姉さんは、彼女が更生するのと対照的にグレていってて、その日はちょうど友達と遊び歩いていて難を逃れた。

お父さんは、彼女と一緒に寝ていたんだけど、煙のせいで視界が悪く、彼女の声は聞こえるものの自分だけが逃げ出すのでやっとだったそうだ。

その火事の騒動が終わって間もなく、卒業アルバムが配られた。
その子の作文もちゃんと掲載されていて、先生やクラスのみんなへの感謝やこの学校に通えて、変われてよかった。

今はお姉さんが悪くなっているけれど、自分はもう悪い方向には行かないということが書かれていた。

この間ふと彼女のことを思い出して、ストリートビューでそのアパートを調べてみたら、アパート自体は今も残っていた。

火事のあとで当然修理はされていたが、いかにも安普請で狭い感じだった。

街も意外に今の仕事の関係でよく立ち寄るところだったんだが、昼間から酒飲んでいる大人がそこらじゅうにいるようなところだった。

あのときは、お父さんと一緒に暮らせる方がいいと思っていただんだけど、その数箇月の間彼女は幸せだったんだろうか?

せめて卒業まではお祖母さんの家に暮らしてこっちの学校に通っているほうが、よかったんじゃないかと思っている。

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