その鏡を誰かが見つけてしまったら

カテゴリー「都市伝説」

今は寺も潰され、納具の行方も定かではないから真相は闇の中。

けれどもある話によれば、その鏡は人の魂を吸い取る魔鏡だったとか。
この先は都市伝説に興味のある人だけ目を通して貰えるとありがたい。

鏡の力に関しては尾ひれがついていることもあり実態は不明。
ただ肝試しにその寺に訪れたことのある学生がいたらしく、その関係者から伝聞という形で概要だけは伝わっている。

「芸能関係者」のような素性の知れない人間が発信者なので、内容の信憑性については保証されない。

肝試しを企画したのはその関係者と友人関係にあった女性の男友達。
参加者はその男性と女性、加えて他に男女が一人ずつの計四人。

女性は元々オカルトの類が苦手だったが、友達の思いつきにメンバーが便乗してしまった為、しぶしぶ着いて行くことに。

拝殿には実際に鏡が納められていたらしい。

これに興味本位で触れてしまった友達、すなはち企画者の男性が、次の日から全く登校しなくなってしまう。

女性によれば、男性が鏡に触れた瞬間、目映いばかりの光が溢れ、それと共に彼の悲鳴が響いたという。
しかし直後に目にした相手の様子は、至って普通だった。
だがその時を境に、男性は姿を消した。

一時はただの欠席かと思われた。

しかし家族の下にも帰っていないということから、立派な失踪案件として、警察が動き出す事態にまで発展した。

時を同じくして、奇妙な事件が発生する。
例の本殿から鏡が消失した。

当初、犯人は姿をくらました彼ではないか、と女性は踏んでいた。
目的は分からない、しかし状況から察するにそれ意外考えられないのも事実だった。
無論この事件にも警察は駆り出されていた。
窃盗事件として捜査していた様子。

尚事件についてはそれを示す有用な資料がない為、その詳細や顛末については不明とされている。

ただ窃盗の方はともかくとして、失踪の件については、それに該当すると思われるものがあるそうだ。

すなはち男性は発見されることはなかった。

事件のことがあってから、巷では呪いの鏡が解き放たれたなどと噂が立つようになっていた
この頃から、女性の様子が変わり始めた。

正確には彼女を含む、肝試しに参加したメンバーに変化が現れていた。

男性の一件が正式に事件として扱われてから、彼女たちもまた休みがちになっていった。

そしてある日、彼女を除くメンバーの面々が、理由もよく分からないままに、教室に姿を見せるでもなく転校した。

女性については顔も青ざめ、まるで重病患者のような様相を呈していた。
話によれば、女性の下に、あの鏡が出現したらしい。

そこには、あの日姿を消した男性の顔が写っていたそうだ。

まるで助けを請うような悲壮な表情をしていたという。
女性は思わず悲鳴を上げた。

それを聞き付けた家族が駆け付けた時にはもう、鏡は消えていた。

しかし彼女は言う。
まるであの鏡に、今もどこからか監視されているような気がすると。

それが、最後の会話となった。
その後女性もまた、姿を消した。

表向きは転校ということだが、少々妙なことに、まるで彼女の存在した形跡が消えていたという。

解体工事があった訳でもないのに、家は跡形も残っていなかった。
失踪した男性や彼女の前に転校した面々の家は、まだあったというのにだった。

連絡の一切が途絶え、家族もろとも、まるで始めからいなかったかのように、その後消息を得ることはなかった。

これが話の全容である。

鏡は今も見つかっていない。
噂が本当だとして、いまその鏡がどうなっているのかは誰も知らない。

ただ、今でも噂話だけは一人歩きしている。
もしも、鏡を見つけてしまったとしたら、どんな結末を迎えるかは、誰にも知りようがない。

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