西新宿に住んでいた時の話。
そこは路地に面した、日のあまり射さない築20年のワンルームマンションで、風呂はユニットバス。
歌舞伎町のホステスが手首切っててもおかしくなさそうな、謂れのありそうな物件・・・。
だったけど、安いし一人身の気楽さで2年ばかし住んでいた。
ある深夜、3時頃だった。
会社から徒歩で帰ってきた俺はもうめちゃくちゃ眠かったんだが、汗臭いままで寝るのも嫌だったんでバスタブに栓をしてシャワーを浴びた。
浴びながらバスタブにお湯が溜っていくんで、いい感じに溜ったらそのまま浸かった。
んで寝てしまった。
すると突然風呂の戸がノックされた。
寝ぼけていた俺は何の違和感も覚えず、「すみませんちょっと待ってくださ~い」とか言いながらバスタオル羽織って風呂から出た。
当然誰もいない。
時間は4時頃だったと思う。
だんだん目が覚めてきて、あり得なさに気づいて、いや寝ぼけたんだろう・・・と、とりあえず思うことにした。
疲れてるし、体も冷めちゃったし寝ようと思って、バスタブの湯を抜こうと風呂の戸を再び開けた。
なんかおかしい。
白熱球の明かりに照らされたユニットバスの壁面、いままで俺が背を付けて寝ていたほうの壁一面に、真っ黒な人の形がついていた。
カビみたいな感じだが絶対別もんだって気が強くした・・・。
よく見ちゃったらやばい気がしたんで、湯も抜かずにバタンと戸を閉めて、電気をつけたままベッドに潜り込んだ。
翌朝見ると、そんなものは何にもなかった。
血とかならまだ納得がいくんだが、あの黒い人がたが何だったのか、いまだに気になる。