友人が北海道で登山に言ったときの話。
その日、彼は趣味で登山に来ていたが、吹雪かれてしまった。
どうやら予定の道からそれたらしく、別の道を歩いてたそうだ。
困ったところでただ歩いても死ぬだけ。
テントでも張りたいところだが、張るには風が強すぎる。
雪が少ないだけマシか・・・と思ったら、ポツンと8~10m位の所に小屋がある。
誰がいつ造ったか分からないが、ひとまず入ることに・・・。
丁寧に風除室があり、中には誰もおらず、囲炉裏が真ん中にあるところを見ると少々古いのかもしれない。
わかりやすく「倉庫」と丁寧に書いてある戸を開けると薪と、缶詰がこれでもかっ!!というほどあった。
薪に火を付けて缶詰を食べる・・・。
余裕で明日までもてそうだと思ったとき、ゴトゴトトッガッと風除室から音がする。
(俺と同類かな?)と思い、立ち上がると風除室にそれが入って音がする。
玄関の戸を開けたとたん、ヌッと顔を出したのは見たこともないくらい馬鹿でっかいヒグマ。
そのときそいつは(俺の人生終わりか・・・)と思ったらしい。
何しろ身長は自分の二倍、歩いただけで床がゆがむほどの巨体。
彼は思い出した。
冬のクマはとにかく凶暴で、腹を満たすためなら人をも襲うと・・・そして、それが起きたことがある三毛別のことを。
恐怖に震えていると、そのでかすぎるクマは、転がっていた缶詰を強引に食い破り、クチャクチャ音を立てて食べ始めた。
三時間近く経ったろうか、クマは自分を襲うことはせず、倉庫から缶詰や干し柿を出してモグモグ食べる。
終いには囲炉裏の炎に前足を当ててまるで人間のように暖まる始末・・・。
いつしか彼は寝てしまい、起きたとき(あれ、??クマッ!?クマはどこいった?)
キョロキョロ見回しても居ない。
助かった・・と思い、後ろに倒れたとき、
ドサッ・・・と言う音と共に自分の頬をゴワゴワとした毛がかすめた。
(????)
よく見ると、クマは自分のとなりで丸くなって眠っている。
どうやら自分をエサとして見ていたわけではなかったようだ。
その日の早朝。
吹雪も止んで、おとなしくなった天気の様子を見て下山したそうだ。
翌年もその小屋にいってみたら、泥の足跡や毛、鹿の骨があってすこぶる驚いたそうだ。
だが、その年以来、彼はそこに行っていない。