専業主婦の佐知子さんの周りでは不幸が続いていた。
50歳を過ぎた旦那はリストラ。
今年中学3年の息子は不登校。
そして、佐知子さん自身も更年期障害に悩まされていた。
佐知子さんは精神的に参っていて、相当に追い詰められていた。
そんなある日、中学時代からの地元の友人に誘われ同窓会に顔を出すことにした。
久しぶりに会う旧友たちと昔話に花を咲かせ、佐知子さんはそのひと時を楽しんでいた。
その流れで、中学時代に仲良かったグループ4人で2次会をしようということになり、居酒屋に移動した。
その居酒屋の一室でも佐知子さんたちは楽しく会食していた。
そんな中、仲良しグループの一人であるB江さんがふと思いついたようにこう言った。
B江:「ねぇ、この近くの橋に幽霊が出るんですって。今から行ってみない?」
すると、その場にいた誰もが帰り際に行ってみようということになった。
佐知子さんもその噂は過去に聞いたことがあって、少し興味があった。
皆で行けば怖くはないだろうと思っていた。
下戸でお酒を飲んでいないC美さんの車の運転で、その橋を通るということになった。
居酒屋を出て約5分走ったところにその橋はあった。
車はゆっくりとしたスピードで橋を通っていた。
すると、橋の歩道にひとりポツンと立っている男性の姿が見えた。
車の中にいた誰もが”これはこの世のものではない”と確信した。
佐知子さんはその男性をじっと目を凝らしてみていると、目が合ってしまった。
男性はどこか悲し気な表情を浮かべていたという。
その後、何事もなく月日が過ぎた。
幸い、旦那は次の仕事が見つかり、息子も学校に通えるまで気力を取り戻し志望していた高校にも合格した。
佐知子さん自身、更年期障害が快方に向かい、ささやかながら楽しく暮らしていた。
そんなある日、義父の命日にお坊さんがお経をあげに来た。
お経が終わり、佐知子さんとお坊さんは他愛のない世間話をしていた。
佐知子さんはふとあの橋での出来事を思い出し、お坊さんに話した。
佐知子さん:「ホント気味が悪くて・・・」
お坊さん:「あなたも見たのですか・・・。でも悪い霊ではないですよ彼は」
佐知子さん:「どういうことですか?」
お坊さん:「20年ぐらい前でしたかね。奥さんを病気で亡くした上に事業に失敗し借金を抱えた男性があの橋から身を投げたんです。ちょうどそのころから、男性の霊がたびたび目撃されるようになったんです」
佐知子さん:「はぁ・・・」
お坊さん:「でもどうやら人を呪ったり災いをもたらすことはないそうです。それどころか、彼を目撃した人は不幸から脱したという話が後を絶たないんです」
佐知子さん:「というのは?」
お坊さん:「どうやら彼は、自分が生前苦労した分、他人を救ってあげたいという気持ちが強いんでしょうね。きっといつか成仏してくれることでしょう」
佐知子さんの人生が好転したのはその男性の霊のおかげなのかもしれない。