知り合いの話。
彼の祖父はかつて猟師をしていたという。
遊びに行った折に、色々と興味深い話を聞かせてくれた。
「山に入ってると、色々と自給自足しなきゃならない時もある。でもな、何が食えて何が食えないかってのは、しっかと押さえとかなきゃいけねえ。」
「随分と奥の山なんだけどな、そこで採れる山芋はマナコイモって呼ばれてたそうだ。掘り出すと一見普通の山芋なんだが、所々ギョロリとした目玉が付いてるんだと。中にゃ気持ち悪いことに、まるで人の頭そっくりな形の芋もあったってことだ」
「これが実に美味いんだと。でも、絶対に食っちゃならねえ。一回でも腹に入れちまうとな、もうその後の人生、この芋以外の物は食えなくなるというんだ。他の何食っても、もう胃の腑が受け付けねぇって。」
「眼芋が生えてんのはその山だけだから、二度とそこから下りられんようになる訳で。運悪く食っちまって、そこに住み着く羽目になった木樵が伝えた・・・って話だ」
「でもまぁ実際、飢え死にするくらいなら食っちまうかなぁ」
死んじまうよりはなぁ、と祖父さんは悩ましい顔をした。