突然だが私は太っているためか、イビキがかなりうるさいらしい。
先日伊豆の温泉へ社員旅行にいったのだが、私が夜中にふと目を覚ますとホテルの部屋の中には誰もいなかった。
どうやら同部屋の軟弱な後輩達は私のイビキに耐えかねて、他の同僚の部屋に避難したようだ。
まぁいいわ。
さて、小便でもするかね~と、トイレに向かうが部屋の電気が灯かない!
(後で気付いたが、部屋のキーを挿してないと電源が入らないタイプの部屋で後輩がそのキーを持っていってしまっていた。)
ちょっと怖いのでドアを開けたまま暗やみのトイレで座って小便をする事にしたいい年の私。
・・・しばらくすると部屋の方から「ヒタヒタ・・・ヒタヒタ・・・」と部屋のなかを裸足で歩き回る音が!
なるほど、私は後輩がイビキの仕返しに、私を驚かせてやろうとドッキリを仕掛けてきやがったな!と考えた。
「さすが我が後輩達よ。だがね!俺はもっとズルイし賢いんだ。返り討ちにしてくれよう」
一人でニヤニヤしながら、そ~っと音を立てないように部屋のドアから廊下へ脱出。
非常口から中庭にこっそり廻った!
私達が泊まっている部屋は一階の角部屋。
非常口から外に出れば、簡単に部屋の外に廻りこめた。
私は後輩達に気付かれないように窓の方に近付きそっと部屋を覗きこんだ。
真っ暗な部屋の中、立っている人影が確認できた。
私は深呼吸をしてから思いっきり窓をガタガタさせて叫んだ!
「ゴルァ!!」
すると私に気付いた人影が物凄い勢いでこちらにスーッと平行移動で近づいてきた!
「あれ・・・ビビってない?・・・つーか後輩じゃない!?うわぁ!?」
・・・見るとおぼんを手にした和服姿の女中さん?
下を向いたままこちらに突っ込んでくる!
「ヤバい!人間じゃない」
私は驚き裸足のまま猛ダッシュで逃げた!
走りながら振り返ると、女がおぼんをカタカタ震わせながら追い掛けてくる!!
もう後は無我夢中で逃げて他の同僚を叩き起こして部屋に入れてもらった。
しばらくドアの前をカタカタ音が行ったり来たりするのが聞こえたがやがて静かになった。
翌朝。
部屋からいなくなった後輩にこの話をした所、こう答えた。
「イビキは関係ない。先輩の寝ている顔をずっと覗き込んでる女がいた。だから怖くなって逃げた」